車いす判定時におけるティルト・リクライニング機構適応についての調査

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【目的】<BR>当機関では身体障害者更生相談所業務を行っており、このうちの補装具費支給判定について、医師、身体障害者福祉司等の専門職員及びCPOに加え、平成19年度より理学療法士が加わり連携を図っている.平成20年度より補装具費支給制度の改訂により、車いす処方の基準にティルト機構が導入されたが、これをうけて今回ティルト機構やリクライニング機構の適応を探るべく当センターにおける車いす判定内容について調査した.また当センターでは補装具費支給判定に際して、身体機能評価に加え日常生活動作(ADL)の評価を行ってきた経緯もあり、ティルト機構やリクライニング機構の適応とADL評価の関係についても検討を行った.<BR>【方法】<BR>平成19年度1年間の当機関における車いす処方の判定は74例.この74例についてティルト機構やリクライニング機構処方の有無とその適応理由を後方視的に調査し、ティルト機構やリクライニング機構が必要な理由、身体機能やADLを調べた.ADL評価には機能的自立度評価法(FIM)を用いた.ティルト機構やリクライニング機構の有無により分けた2群について、FIM運動評点を便宜的に連続変数とみなし両群の比較を行った.<BR>【結果】<BR>車いす判定での処方において、ティルト機構やリクライニング機構が適応となった場合のニーズや所見として明らかになったのは、座位保持が不可能(21%)、車いす座位時の前方へのずれ(14%)、座位姿勢を獲得することでのQOL向上(14%)、股関節拘縮(11%)、痙性(10%)、体幹・下肢の筋力低下(9%)、褥創管理や予防の為(6%)、介助面考慮の為(6%)、脊柱側弯(2%)、その他(7%)であった.またADLでは、ティルト機構やリクライニング機構の有無により分けた2群間でFIM運動評点を比較した結果、FIM運動評点のすべてについて、ティルト機構やリクライニング機構処方群の方が、有意に低値であった(Mann-Whitney's U-test, p<0.0001).<BR>【考察】<BR>これまでにティルト機能付き車いすの利点として、変形や緊張などの障害状況への適合、抱きかかえた自然な姿勢で移乗可能など介助者の負担軽減、また同姿勢から起きる局所的な圧力の分散が報告されている.これらのニーズは、本調査で得られたニーズとほぼ一致していた.また様々な身体所見の重複による、座位保持不可、前方へのずれ、介助量過多、QOLの低下などがFIM運動評点低値の一因になっていることが今回示唆された.<BR>【まとめ】<BR>当センターの車いす判定に際してティルト機構やリクライニング機構処方となったものは、股関節拘縮、痙性、筋力低下などによる座位保持不可、前方へのずれ、QOL向上が必要な者で、FIMの運動評点の低値な者が多いという結果となった.また車いす判定の際の処方においては、障害状況や目的、使用環境など当事者のニーズ聴取に加え、理学療法士による機能評価やADL評価が有効であることが明らかとなり、これに基づく車いすの指導が重要であると考えられた.

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  • CRID
    1390001205567953536
  • NII Article ID
    130004579842
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a1o2022.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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