脳出血モデルラットに対するトレッドミル走による運動機能回復効果

DOI
  • 高松 泰行
    名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学専攻
  • 石田 章真
    名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学専攻
  • 濱川 みちる
    名古屋大学医学部保健学科理学療法学専攻
  • 嶋田 悠
    名古屋大学医学部保健学科理学療法学専攻
  • 中島 宏樹
    名古屋大学医学部保健学科理学療法学専攻
  • 平井 梨奈
    名古屋大学医学部保健学科理学療法学専攻
  • 石田 和人
    名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学専攻 名古屋大学医学部保健学科理学療法学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • ―脳出血後早期の病態に着目した検討―

抄録

【目的】脳卒中発症後のリハビリテーションは可及的早期の開始が推奨されている.我々は,第40回本学術大会で、脳出血モデルラット作成後早期(4~14日目)にトレッドミル走を実施すると運動機能の回復が早まり、大脳皮質(補足運動野、運動前野)の萎縮を抑制することを報告した.しかし、その作用機序については未だ不明な点が多い.そこで本研究ではトレッドミル走開始前後の脳の病態を組織学的に比較検討した.<BR><BR>【方法】実験動物にはWistar系雄性ラット(8週齢)を用いた.深麻酔下にて頭蓋骨に小穴をあけ、左線条体にカニューレを挿入し、マイクロインジェクションポンプにつないでコラゲナーゼ(Type IV)を1.2 μl(0.2 μl/分を6分間)注入し、脳出血モデルを作成した.脳出血後、無作為に運動群(n=4)、非運動群(n=3)に分け、運動群にはトレッドミル運動(9 m/分、30分/日)を脳出血後4~14日目まで実施した.非運動群は1日30分間トレッドミル装置内に暴露するも走行はさせなかった.また、コラゲナーゼの代わりに生理食塩水を注入したsham群(n=3)を設け、運動群と同様の運動を実施した.Bigioらによる、Motor Deficit Score(MDS)テストを用い、出血14日目までの運動機能回復を評価した.術後3日目と15日目に深麻酔下で灌流固定を行い40 μm厚の凍結切片を作成の上、H-E染色を施し、脳組織の観察を行うとともに線条体残存体積、大脳皮質の厚さを計測した.また術後1~7日目の脳浮腫(脳内水分含有量)および神経細胞変性(Argyrophil III染色)について調査した.なお本実験は、本学動物実験委員会の承認を得て行った.<BR><BR>【結果】MDSテストの総合点では、運動群が非運動群に比べて早く回復する傾向にあったが、両群の間に統計学的な有意差は認めなかった.線条体残存率、大脳皮質の厚さは運動前後(3日目 vs 15日目)で差は無く、15日目での運動群と非運動群の間にも差は無かった.脳内水分含有量は術後1~2日目ではベースラインに対して有意に増加したが、3~7日目ではベースラインのレベルに戻った.Argyrophil III陽性細胞は術後24時間で大脳皮質第V~VI層に、3日目で大脳皮質第III層に検出されるも、7日目では検出されなかった.<BR><BR>【考察】脳出血後のトレッドミル走は運動機能の改善を促進する可能性が示された.しかし、組織学的には運動の有無や運動前後で変化は認められず、出血後2週間までに生じる運動機能回復には線条体の神経保護作用や大脳皮質の萎縮抑制とは別の因子が関与していると考えられる.また脳出血後の脳浮腫や神経細胞障害(Argyrophil III陽性細胞)が術後7日目で認められなくなることから、これらを指標とした検証は出血後1週までの検討に用いるべきと考えられる.今後、他の因子の解析も進め、更なる機能回復の機序を明らかにするべきである.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), A3P1027-A3P1027, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565999104
  • NII論文ID
    130004579879
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a3p1027.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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