THA患者における足関節底屈筋力と片脚立位時間の関係

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抄録

【目的】THA患者において,立位バランスや足関節底屈筋力(以下,底屈筋力)はバランス能力や歩行時の推進力の床面への伝達,静脈還流の促進に関与する要因の一つであると考えられており,理学療法プログラムを立案する上で底屈筋力を把握することは重要である.底屈筋力は臨床場面においてはダニエルによる徒手筋力検査法(以下,MMT)が広く利用されているが,段階の解釈には苦慮する.そこでTHA患者を対象にハンドヘルドダイナモメータ(以下,HHD)の底屈筋力値と片脚立位時間,MMTにおける底屈筋力段階の関係性について検討した.<BR>【対象】対象は当該施設通院中の歩行可能なTHA術後患者11名(男性3名,女性8名),事前に研究目的と方法を説明し,理解と同意を得た.対象者の平均年齢は63.45±16.63歳,平均体重は59.74±9.18 kg,また術後経過期間の中央値は9カ月であった.<BR>【方法】底屈筋力はHHD(アニマ株式会社製)を用いて計測した.長座位にて腕を組み,膝伸展位,足底背屈0度となるように測定下肢を足関節固定台に取り付けた.HHDのセンサーは中足指節間関節の上端を覆うように測定台に設置し,足部と固定台をセラバンドで結びつけ,更に踵と固定台が離れないように徒手にて固定した.この状態で最大努力にて3秒間の等尺性収縮を促し,30秒の休息を入れて3回実施し,最大値を体重で除したものを採用した.MMTの段階付けは新・徒手筋力検査法第7版に基づき,立位膝伸展位での足底屈回数により段階づけを行った.片脚立位時間は60秒で測定終了とし,30秒の休憩を挟んで2回ずつ測定し,最大値を採用した.また統計的手法としては,Pearsonの相関係数およびSpearmanの順位相関係数を用いた.有意水準は5%未満とした.<BR>【結果】術側底屈筋力と術側片脚立位時間(rs=0.75 ,p<0.01),術側底屈筋力と術側底屈のMMTの底屈段階(rs=0.75 ,p<0.01),術側底屈筋力と健側底屈筋力(rs=0.94 ,p<0.01)に優位な相関が認められた.底屈回数においては術側と健側の間に有意な相関は認められなかった.<BR>【考察】本研究では術側下肢の底屈筋力と術側片脚立位時間に関連性を認めた.直立位で体幹が前方に傾くと,下腿三頭筋は収縮し,体幹を元の位置に戻すために片脚立位は足底屈筋力の影響を受けると考える.MMTと足底屈筋力との関係については術側底屈筋の段階づけが高くなるほど足底屈筋力の値が大きくなっていることから,それぞれの順位性は保たれており先行研究と一致する.しかしながら,非荷重肢位となるHHDでの底屈筋力測定では術側と健側で強い相関を示すのに対し荷重位で測定するMMTでの底屈回数では相関を示さなかった.これはMMTでの底屈の段階づけが純粋に筋力以外の要素を含むことを示唆している.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), A3P1044-A3P1044, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680542741888
  • NII論文ID
    130004579895
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a3p1044.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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