足底板が高齢者における歩行中の下肢関節運動に与える影響

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抄録

【目的】<BR> 一般に高齢者の歩行では、下肢関節運動や推進力が減少し、速度も低下している.歩行中の推進力発揮には足部・足趾が重要な役割を持つが、高齢者では外反母趾などの変形を伴うことも多く、その機能が低下していると考える.本研究の目的は、高齢者に対して足部・足趾の機能発揮を補助する足底板を作成し、その適応や有効性を検証することである.<BR>【方法】<BR> 対象は明らかな疾患を有さず、研究への同意が得られた高齢者10名(年齢;83.4±6.7歳,男性4名,女性6名)とした.本研究で用いた足底板は被験者の足型に合わせて作製し、加工を施していないもの(N)、足趾部分を下降させたもの(F)、足底板の裏面の周囲(足趾以外の部分)に沿って約 2~4mm高の縁をつけたもの(W)、FとWの両方を組み合わせたもの(FW)の4種類とした.課題は、4種類の足底板を各々装着した10mの自由歩行とし、速度、歩幅、歩行率を求めた.さらに床反力計(KISLER社)およびデジタルビデオカメラで自由歩行を3回測定し、動作解析ソフト(Frame-diasIV)により、1歩行周期での右側の股関節、膝関節、足関節の屈伸の最大角度、足関節底屈モーメントの最大値を求めた.解析には3試行の平均値を用いた.なお、各条件の測定順は無作為とした.加えて、 足底板の適応を判断するため、被験者の右足の外反母趾角を測定し、その中央値を求め、中央値未満の群をA群、中央値以上の群をB群としてグループ分けした.統計処理は一元配置反復測定分散分析と多重比較(Bonferroni法)により各条件の比較を行い、有意水準を5%とした.<BR>【結果】<BR> 足底板の種類によって速度、歩幅、歩行率、各関節の最大角度、足関節底屈モーメントの最大値に有意差はみられなかった.外反母趾角でグループ分けを行うと(A群5名,B群5名)、両群とも速度、歩幅、歩行率に有意差はみられなかったが、立脚終期から前遊脚期の足関節最大底屈角度がN(7.65±6.4°)に比較してFW(13.97±2.9°)で有意に増加した(p<0.01).B群ではFおよびWでもNに比較して最大底屈角度に増加傾向がみられたが有意差はみられなかった.足関節底屈モーメント最大値は、B群でのみ、N(1.09±0.24Nm/kg)に比較してFW(1.26±0.36Nm/kg)で増加傾向がみられたが、有意差はみられなかった.<BR>【考察】<BR> 足趾を下降させ、足部の周囲に縁をつけた足底板によって、B群の足関節最大底屈角度が増大した.外反母趾傾向にある場合、母趾による荷重支持・推進が困難となるが、足趾の下降と中足骨頭部の側方の安定化作用によって、よりスムーズな前足部への荷重の移行が可能になったことが推測される.本研究で作成した足底板により、 母趾による荷重支持・推進機能を補助できる可能性が示唆された.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), A3P2029-A3P2029, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565596544
  • NII論文ID
    130004580056
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a3p2029.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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