MR-tractographyを用いた脳卒中後機能予後評価の検討

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タイトル別名
  • ―理学療法による運動神経線維の経時的変化―

抄録

【目的】<BR> 近年、脳血管障害による片麻痺の回復に関する予後予測において、functional MRIの開発により多くの知見が報告されているが、まだ未解明な部分が多い.MRIを用いたfiber tracking手法(以下tractography)は、皮質運動感覚線維路を描出させることを可能とした.今回我々は、急性期から回復期における脳卒中片麻痺患者にtractographyを行い、運動機能と神経線維数の変化を検討した.また慢性期片麻痺症例においても経時的に検査を行い、理学療法の効果と脳機能再構築のメカニズムについても検討を加えたので報告する.<BR>【方法】<BR> 対象は脳卒中急性期~回復期(以下急性期例)と発症から1年以上経過している慢性期(以下慢性期例)の片麻痺患者32例(平均年齢68.5±10.9歳)で、内訳は歩行への回復良好な患者18例と回復不良な患者14例であった.tracking方法は1.5T MRIを用いて、拡散テンソル画像を撮影し、Volume one/dTV1.5ソフトウエア(東京大学研究チーム開発)を使用して運動神経線維を描出した.関心領域は大脳脚と中心前回に設定し、拡散異方性を示すFA値は0.18として、約3ヶ月間2週間毎にtractography を描出した.運動機能評価としては、Stroke Impairment Assessment Set(以下SIAS)の中で運動機能・筋緊張・体幹機能・非麻痺側機能の項目を用い、神経線維数と運動機能の程度に相関関係があるか否かを検討した.統計処理はPearsonの相関係数、t検定を用いて行った.また、急性期例ではBrunnstrom Recovery Stage(以下BRS)の経時的変化の追跡とともに、慢性期例ではビデオ撮影により歩行を評価し、神経線維と運動機能を比較検討した.尚、被検者には研究内容を説明し同意を得た.<BR>【結果】<BR> SIASと神経線維数には高い正の相関(r=.75、p<.01)が認められ、歩行能力が自立に近づくにつれ、運動神経線維数は増加した.BRSが著明に改善した急性期例で、梗塞巣の小さい例では発症直後麻痺側の神経線維は減少し、以後徐々に増加し、発症直後から正常側の神経線維が増加する過程が捉えられた.また梗塞巣が大きくBRSに改善が認められなかった例では、発症直後麻痺側の神経線維が著減したままで正常側の神経線維のみが増加していた.一方、歩行能力の改善がみられた慢性期例では正常側の神経線維が増加してゆく過程がみられた.<BR>【考察】<BR> tractographyによる神経線維数の増加は、SIASと有意な正の相関関係が認められ、片麻痺患者の機能予後を予測するにあたり、有用と考えられた.また急性期からの回復過程と慢性期での運動機能改善時において正常側の神経線維が増加する経過が捉えられた.このことは脳機能再構築のメカニズムに関して、同側性運動路や錐体外路系を含めた要因が関与しているのではないかと考えられた.さらに慢性期においても理学療法を実施することで脳機能を再構築させる効果があることが示唆された.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), B3P2321-B3P2321, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680542620672
  • NII論文ID
    130004580511
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.b3p2321.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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