頭尾側方向への軸圧抵抗エクササイズが立位姿勢に与える影響

DOI
  • 西村 圭二
    市立長浜病院 リハビリテーション技術科
  • 北村 淳
    市立長浜病院 リハビリテーション技術科
  • 白星 伸一
    佛教大学 保健医療技術学部 理学療法学科
  • 山﨑 敦
    文京学院大学 保健医療技術学部 理学療法学科

書誌事項

タイトル別名
  • ―背臥位におけるアプローチ―

抄録

【はじめに】不良姿勢を伴う患者に良姿勢を指導するにあたり,様々な方法を用いるが,頭頸部のコントロールによって認識が得られやすいことを臨床上経験する.そこで,背臥位において頭頂から尾側方向に圧刺激を繰り返し加え,圧に抗するように押し返す軸圧抵抗エクササイズ(以下EX)を施行したところ,立位姿勢に変化を認めたので報告する.<BR><BR>【対象と方法】本研究に同意を得た健常成人9名(平均27.7±5.4歳)を対象に,EX前後の立位の重心動揺測定と姿勢撮影を行った.測定肢位は両脚の中心を舟状骨粗面に合わせ15cm幅で開脚した立位とし,下肢荷重計(アニマ社製G-620)を用いて,両脚,片脚立位の重心動揺を30秒間計測した.また,耳垂,オトガイ隆起,肩峰,第5中足骨底にマーカーを付け,矢状面の立位姿勢を撮影した.運動性評価として指床間距離(以下FFD)を計測した.EX肢位は,股膝屈曲位で被験者の胸椎最後彎部にロール状に巻いたバスタオルを挿入した背臥位とした.検者は頭頂から仙骨に向けて母指で軽く圧を加え,被験者にはこの圧に抗して頭側方向に伸び上がるように促した.押し返す動作には顎を軽く引き胸椎を伸展する力と,下肢により頭側へ軽く蹴る力を用いた.まず深呼吸を10回した後に,運動方向の認識のため他動的に頭尾側方向にゆするように動かした.徐々に自動介助での運動に移行し,頭頂からの軸圧に意識的に抗するように促した.運動後再び深呼吸を行った.施行時間は全体で2分間とした.得られた結果から,両脚,片脚立位の総軌跡長,外周面積,FFDを比較した.撮影画像より第5中足骨底を通る垂直線を基準に耳垂,オトガイ隆起,肩峰の各々の距離をパソコン上で求めた.統計処理は対応のあるt検定を用い,危険率5%未満とした.<BR><BR>【結果】総軌跡長は,両脚でEX前後に有意差はなかったが,片脚ではEX前123.7±30.0cm,EX後108.6±24.1cmと動揺は有意に減少した(p<0.01).外周面積は,両脚,片脚ともEX前後で減少したが有意差はなかった.垂直線との距離は,耳垂はEX前3.6±1.5cm, EX後2.6±1.1cm,オトガイ隆起はEX前11.5±1.6cm, EX後10.4±1.6cmと減少した(p<0.05).肩峰との距離に有意差はなかった.FFDはEX前-2.3±8.4cm,EX後0.1±7.9cmと増加した(p<0.05).<BR><BR>【考察】EXにより立位安定性向上と頭部後方偏位を認めた.これは,頭頂から尾側方向に加えられた圧刺激に抗することで,ロールタオルを支点とした胸椎伸展が促され,さらに顎を引き頸部後面筋を伸張するようにして頭頂で押し返すことにより,頸部前面筋の活動を促通することが可能となったと考える.また下肢で蹴る力も用いることで,上半身と下半身の頭尾側方向の連動が推察された.FFDの増加から,EXは静的安定性だけでなく姿勢制御に伴う身体柔軟性にも影響することが考えられた.よって,立位アライメント修正および安定化においてEXの有効性が示唆された.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), C3P1365-C3P1365, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680542293248
  • NII論文ID
    130004580636
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.c3p1365.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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