着地動作時の膝関節外反に影響を及ぼす要因に関する考察

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抄録

【目的】非接触型の膝前十字靭帯(ACL)損傷の代表的な受傷機転として,ジャンプ着地時の膝関節外反があげられる.この膝関節外反が起こる要因として,足部や股関節との関連が報告されており,股関節外転筋と膝関節外反の関係が示されている(松本ら,2007).一方,足部内側縦アーチが降下することで膝関節外反角度が大きくなり,ACL損傷を起こしやすいとされているが(塚原,2006),筆者らの観察からこのような関係が常時に認められるかに疑問をもった.本研究では,高校女子バスケットボール選手のジャンプ着地の測定を行い,内側縦アーチ降下が膝関節外反角度を増大させるかを調べることとした.同時に股関節外転筋力も測定し,股関節外転筋力低下と内側縦アーチ降下ではどちらが膝関節外反を起こす要因となるかを調べることとした.<BR>【方法】対象はバスケットボール部に所属している高校生女子35名(年齢16.2±0.7歳,身長160.7±5.8cm,体重52.7±5.3kg)である.課題動作は30cmの台から跳び降りて左脚で着地することとした.この際に,上前腸骨棘,膝蓋骨中心,足関節中心にマーカーを貼付し,前方からデジタルビデオカメラにて撮影し,得られた画像からScion Image(Scion社)を用いて前額面における膝関節外反角度を算出した.アーチ高を足長に対する舟状骨粗面高の割合から算出し,非荷重時のアーチ高から荷重時のアーチ高を減じたものを内側縦アーチ降下量とした.等尺性股関節外転筋力は背臥位にてミュータス(アニマ株式会社)を用い測定した.統計学的処理は,内側縦アーチ降下量と膝関節外反角度の関係,股関節外転筋力と膝関節外反角度の関係,内側縦アーチ降下量と股関節外転筋力の関係を調べるためにピアソンの相関係数を用いた.危険率5%未満を有意とした.なお,本研究は広島大学大学院保健学研究科心身機能生活制御科学講座倫理委員会の承認を得て行った.<BR>【結果】内側縦アーチ降下量が大きいほど膝関節外反角度が大きくなる傾向が示された(r=0.31,p=0.07).股関節外転筋力と膝関節外反角度の間に有意な負の相関が認められた(r=-0.43,p<0.01).また,股関節外転筋力と内側縦アーチ降下量に有意な相関は認められなかった(r=-0.07,p=0.67).<BR>【考察】本研究の結果から,荷重による内側縦アーチ降下量が大きい対象は膝関節外反を起こしやすいという傾向が認められた.今回は35名の対象であったが,対象数を増やすことで有意差が認められるかは今後の課題である.股関節外転筋力が低いと膝関節は外反しやすいことが本研究でも確認することができた.内側縦アーチ降下量と股関節外転筋力の間に有意な相関が認められなかったことから,股関節外転筋力と内側縦アーチの両方の評価が必要である.<BR>【まとめ】内側縦アーチ降下量が大きい対象は膝関節外反角度を増大させる傾向がある.股関節外転筋力が低い対象は膝関節外反を起こしやすい.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), C3P1455-C3P1455, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565884032
  • NII論文ID
    130004580719
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.c3p1455.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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