むち打ち損傷に対する理学療法の経験

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抄録

【はじめに】むち打ち損傷の理学療法はそのほとんどが牽引や温熱による治療であることが多い.今回交通事故後のむち打ち損傷に対して徒手的治療をする機会を得たので、今後の頚部疾患へのアプローチを探る一助とするためクリニカルリーズニングを基にした経過を考察を交えて報告する.発表に当たっては症例の同意・承諾を得て報告するものである.<BR>【症例紹介】44歳、女性、主婦、診断名はむち打ち損傷(頚椎捻挫)、既往歴は特に無し.<BR>【受傷機転】平成19年12月7日車を運転中、信号で停車していた時後方から追突され、後方のシートに頭を打ちつけた.救急にて当院へ搬送されたが頚椎に関してレントゲン・MRIでは特に異常は見られず、安静と湿布で様子を見ていたが5日後、頭痛及び睡眠障害が出現し改善がみられない為、理学療法開始となった.<BR>【クリニカルリーズニング及び治療内容】平成20年1月10日より理学療法を開始した.初期評価では日常生活は何とか自力で可能であったが、頚部の動きがすべての方向に著明な制限が見られ、主として右回旋に制限が大きかった.両上肢全体には感覚低下を認めた.Visual Analogue Scale(以下VAS)では痛みが2-7レベルで持続的に存在し夜間痛もあった.立位バランスも低下していた.その他の症候として頭痛、眩暈、むかつき、顔面への放散痛等がみられた.Neck Pain Disability Index(以下NDI)は40/50点であった.以上のことから椎間関節への急激なストレスによる運動障害と疼痛、頚椎性の頭痛と感覚障害、三叉神経頚髄核に関連した顔面痛、自律神経症状としてのホルモンバランス低下等とリーズニングし、治療を実施した.治療内容は週3回の外来にて、上位・下位頚椎に対する徒手的治療、椎前筋のスタビライゼーション、動き・姿勢に対する再教育、日常生活でのアドバイスなどを行なった.結果、同年4月にはVASは2-5レベルへ、NDIは14/50点へ、6月にはVASは0-2レベルへ、NDIは9/50点へ変化した.また頭痛と顔面への放散痛もほぼ消失に近いレベルまで改善し、立位バランスも向上、頚椎の動きもほぼ正常域まで改善された.6月19日に症状改善をもって理学療法を終了した.<BR>【考察】本症例から理学療法の介入の時期が検討される.また徒手的治療による好結果も考えられる.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), C3P3394-C3P3394, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205567824128
  • NII論文ID
    130004580932
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.c3p3394.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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