摂食嚥下障害とADLおよび栄養の関連

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抄録

【目的】<BR>理学療法の開始時と終了時で摂食嚥下障害の改善の有無とADLの変化を比較し、両者が関連しているかを確認すること、また摂食嚥下障害と栄養状態の関連を明らかにすることを目的とした.<BR>【方法】<BR>対象は平成19年11月から平成20年10月までに通常の理学療法に加え、摂食嚥下リハビリテーションにて直接的介入を行った入院患者50名(男性24名、女性26名、平均年齢80.7±8.5歳、平均実施期間57.3±35.3日).疾患の内訳はCVA17名、肺炎17名、その他疾患16名であった.摂食嚥下障害患者における摂食状態のレベル(以下レベル)で理学療法開始時と終了時の重症度を比較し、対象を改善群と非改善群の2群に分けた.ADLはFIMにて評価し、各群でFIMの開始時平均値とFIMの終了時平均値の差についてt検定を行った.そして摂食嚥下障害と栄養状態の関連をみるため、レベルと総蛋白質濃度(以下T-P)及びアルブミン(以下Alb)の値を開始時と終了時でそれぞれPearsonの相関係数を用いて比較した.調査に関しては、対象本人またはその家族の同意を得た上で行った.<BR>【結果】<BR>改善群は28名、非改善群は22名であった.改善群におけるFIMの開始時平均値は35.3±17.1点、終了時平均値は55.9±28.4点であり、終了時の方が有意に高かった(p<0.01).一方、非改善群ではFIMの開始時平均値は26.5±12.8点、終了時平均値は29.7±18.3点で有意差は見られなかった.対象全体におけるレベルの開始時平均値は2.2±2.1で終了時平均値は4.6±2.9で、T-Pの開始時平均値は6.1±1で終了時平均値は6.0±0.7であり、Albの開始時平均値は3.1±0.8(n=39)、終了時平均値は2.8±0.5(n=30)であった.レベルとT-P及びAlbの関連については、どちらも開始時、終了時ともに有意な相関はみられなかった.<BR>【考察】<BR>摂食嚥下機能が改善した患者群にのみADLの有意な改善がみられ、摂食嚥下機能とADLに関連があることが確認された.これは頚部・体幹筋が姿勢保持や呼吸に有効に作用できることで、嚥下機能が良好に保たれたものと考えられる.そして摂食嚥下機能と栄養状態にて相関がみらなかったことは、経口摂取可能でも摂取量が少なく必要な栄養を十分に摂取できないことが考えられる.さらに摂食嚥下機能が低く、経口摂取不可能な患者の多くが経腸栄養にて必要な栄養を受動的に摂取するためと考えられる.また、今回の調査では対象の理学療法実施期間が3週間以上の患者に限定して行ったが、Albの半減期を考慮すると、実施期間が更に長い患者を対象に限るべきだったとも考えられる.今後は、栄養状態にあわせて脱水状態についても同様に調査する必要があると考える.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), D3P2505-D3P2505, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205567079296
  • NII論文ID
    130004581104
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.d3p2505.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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