糖尿病予防教室における行動変容理論を用いたグループワークの有用性

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Abstract

【目的】糖尿病のハイリスク者を対象とした,糖尿病予防教室のプログラム内にて,行動変容理論を用いたグループワーク (以下GW) を行い,生活習慣改善の効果を検討した.<BR>【方法】対象者の条件は,東京都杉並区在住65歳以下の糖尿病予備群 (東京都糖尿病予防自己管理支援モデル事業基準に準ずる),参加者は8名 (♂3名,♀5名),平均年齢57.6±11.2歳であった.参加型糖尿病予防教室は,東京都の糖尿病予防自己管理支援モデル事業として,2007年7-12月に杉並区高井戸保健センターにて12回実施した (2回/月,2時間/回).内容は,医師や保健師,栄養士,歯科衛生士などによる講義や調理及び運動実習と行動変容理論の1つであるトランスセオレティカルモデル (以下TTM; Prochaska & DiClemente, 1983) を用いたGWを6回 (1時間/回) 実施した.GWの内容は,前半では,生活習慣改善の行動を開始させるために「現在の生活や身体状況を続けることによる将来への影響や生活習慣を改善することを妨げるバリア要因について」話し合うなど認知的な働きかけを行った.目標行動の設定は,自己効力感を高めるために,95%以上達成できる内容とし,セルフモニタリングシートの結果に対して賞賛や助言を行い,目標が達成できた時の自分への報酬を設定するなど行動の強化を行った.後半は,行動を継続させるために,逆戻りの予防法やモニタリングシートの結果より各自の行動パターンの把握などの助言や話し合いを行った.評価は,介入前後に運動と食事に関する8項目の生活習慣質調査 (5段階評価)とトランスセオレティカルモデルのステージ調査 (5段階評価),血圧,血液検査,尿糖,BMI,腹囲を測定した.生活習慣とステージの変化はWilcoxon符号付き順位検定,その他は,対応のあるT検定を行った.<BR>【結果と考察】生活習慣の変化は,運動の3項目 (気が進まない日でも必ず20分以上の運動をする,休日や休暇にも運動をする,ふつうの日には必ず20分以上の運動をする),ステージ変化は,運動のステージに有意な改善がみられた (p<.05).その他の検査データでは,BMI (平均29.4→28.3) と腹囲 (平均87.1cm→82.4cm) に有意な変化がみられた (p<.05).TTMは,目標行動に対して,全くやる気がない者から行動を実施している者まで5段階のステージがあり,個々のステージに応じたプロセスを用いることで,ステージを上昇させ,目標行動を開始,継続させていく.自覚症状が少なく,指導だけでは生活習慣の改善が困難な者への介入に有用であるとされている.今回のGWでは,前半は,動機付けを高めるための認知的プロセス,後半は,行動を継続させるための行動的プロセスを用いた介入を行った.<BR>知識を提供する講義等とGWの併用により,特に運動習慣の改善がみられ,行動が継続された.今後は,対象者数や長期的な経過,統制群の設定などの検討が必要である.

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680543673088
  • NII Article ID
    130004581163
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.d3p3504.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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