臨床実習前後でのLocus of Contorol(LOC)の変化は、実習中のストレス状況と重要な関連がある

DOI

抄録

【目的】Locus of Contorol(LOC)は、ある問題に対する自己内での統制の所在性のことであり、これまでに我々は、LOCと学業成績や人間関係との関連について調査を重ねてきた.LOCは学業成績と相関があり、内的統制傾向(統制の所在を自己に意識するタイプ)であるほど成績が良いという結果を得ている.他の教育分野でも同様の結果がある.今回は臨床実習成績や臨床実習中のストレスの動向と、LOCの実習前後の変化との間にどのような関連があるかを調査したところ、重要な知見が得られたので報告する.<BR><BR>【方法】本学リハビリテーション学科4年次生84名のうち、臨床実習I期目に身体障害領域の実習を行った63名(理学療法専攻41名、作業療法専攻22名)を対象とした.対象者には研究の趣旨を十分に理解してもらい、同意を得てから調査を行った.質問紙法によるアンケート調査(1)ストレス調査(SRS-50S;実習前後および実習1週後、4週後、7週後)、(2)LOC(水口式内的・外的統制調査票;実習前後)、(3)実習満足度(リハビリテーション臨床実習満足尺度;実習後)を行い、ストレス尺度のカテゴリー毎の平均を各測定ポイント毎に比較(分散分析;p<0.05)し経時的変化を検討し、それをもとに幾つかのストレス変動パターンに分類し、各パターンにおけるストレス評価値の平均とLOC前後差との相関、およびLOC前後差と実習成績、実習満足度との相関(Pearson;p<0.05)を求めた.<BR><BR>【結果と考察】有効回答率は83%であった.ストレス尺度の総平均については4週目が最も高かったが、7週目にストレスのピークを迎えるパターンの学生が最も多く、ストレスの種類によって経時的変化のパターンが異なることが示唆された.実習LOC前後差については、外的統制へ移行した学生ほど、実習成績と実習満足度が有意に低く、実習7週目および実習後の「情動」、「対人」領域のカテゴリーで有意にストレスが増加していた.これは問題を他者や環境のせいにしたり自己統制能力が低い人ほど、実習後期以降にストレスを感じており、実習成績が低く、実習に満足していないという傾向を示唆するものである.現在の学生教育で最も重要なのは、何でも環境や他人のせいにせず、自己を省み柔軟に伸ばしていける自己統制を身につけるための刺激を学生に与えていくべきではないだろうか.それは学内でできていて当たり前と臨床実習指導者は思い、養成校教員は、入学以前までの教育や家族教育の影響を訴えるかもしれない.臨床実習で問題になる学生の情意面等、リアルタイムで現場で直面することに対して、正面から向き合わないといけないのは、実習指導者も教員も同じであると思われる.具体論を含めて議論したい.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), G3P1562-G3P1562, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680543580544
  • NII論文ID
    130004581471
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.g3p1562.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ