ラット拘縮モデルの自然治癒による可動域の変化と関節包の病理組織学的変化(第2報)

DOI
  • 渡邊 晶規
    名古屋学院大学人間健康学部 金沢大学大学院医学系研究科
  • 細 正博
    金沢大学大学院医学系研究科
  • 松崎 太郎
    金沢大学大学院医学系研究科
  • 小島 聖
    金沢大学大学院医学系研究科 金城大学医療健康学部

書誌事項

タイトル別名
  • ギプス固定後24週間後と32週間後での比較

抄録

【目的】<BR> 拘縮によって引き起こされた関節包の病変が自然治癒により、どの程度改善するのかどうか明らかではない。我々は第44回日本理学療法学術大会にて、ラット膝関節拘縮モデルを用い、ギプス解除後16週間にわたる可動域の変化と、後部関節包の病理組織学的所見の経過を報告した。この結果、可動域は早期に改善を示すものの、組織レベルでの改善は16週間後も十分とは言えないものであった。<BR> そこで今回4週間のギプス固定後に、通常飼育による自然治癒期間を24週間と32週間まで延長し、関節包の組織レベルでの改善を検討する目的で実験を行った。<BR>【方法】<BR> 対象には9週齢のWistar系雄ラット16匹を用いた。それらを対照群(n=8)と実験群(n=8)に振り分け、実験群の全てのラットの右後肢にギプス固定を4週間実施した。その後特別な介入を加えることなく通常飼育を24週間実施する群(24週群 n=4)と32週間実施する群(32週群 n=4)に無作為にわけた。対照群は24週群、32週群に対応する週齢まで通常飼育を行った(各n=4)。ギプス固定は右後肢を股関節最大伸展位、膝関節最大屈曲位、足関節最大底屈位で施行し、膝周囲は骨成長のため、足関節遠位は浮腫や傷の有無を確認するために露出させた。ギプスは2週間後に巻き替えを行い、この他にも緩みや外れ認めた場合は早急に巻き替えを行い、可能な限り適切な固定を維持した。左後肢は自由とし、ケージ内の移動や水・餌の摂取は十分に可能であった。ギプス固定前及び固定後1週毎に膝関節の可動域を測定した。各飼育期間終了後、4 %パラフォルムアルデヒドによる灌流固定を行い、膝関節を一塊として採取した。EDTA溶液による脱灰後、膝関節を矢状面で2割し、パラフィン包埋した。その後ミクロトームで約3μmの厚さに薄切し、それらをスライドガラスに貼付け後、ヘマトキシリン・エオジン染色を行い、光学顕微鏡下で後部関節包の病理組織学的観察を行った。<BR>【説明と同意】<BR> 本研究は金沢大学動物実験規定に準拠し、同大学が定める倫理委員会の承認のもとに飼育・実験を行った。<BR>【結果】<BR> 膝関節可動域はギプス固定終了後の通常飼育期間の経過に伴って改善し、5週間後には固定前の角度と同様の値を示した。非固定側は実験期間を通して変化は見られなかった。<BR> 後部関節包の組織学的所見では、24週群と32週群の間に著明な差は認められなかった。両群とも拘縮直後に比べて、膠原線維束間の拡大を認め、比較的疎な組織像を示したが、関節包の肥厚は残存していた。<BR>【考察】<BR> いったん拘縮を呈した関節が、再度完全な可動域を得た場合でも、それに伴って関節組織が改善しているわけではなかった。組織レベルの改善は長期間経過後も完全ではなく、自然治癒の限界が示唆された。今後種々の治療手技を加え検討を重ね、組織レベルでの改善がどのようにしたら得られるのか明らかにする必要がある。あわせて組織レベルでの改善がどの程度まで必要なのかにおいても検討の必要があると考えられた。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 関節拘縮の改善は理学療法士にとって重要な職務の1つであるが、その発生機序及び改善機構はいまだ十分に解明さているとは言い難い。拘縮によって生じた関節構成体の変化が、その後の自然治癒により改善するのかどうかは検討されておらず不明のままである。<BR> 理学療法士として拘縮治療に携わる以上、自然治癒あるいは単純な伸張だけでは改善できない部分へのアプローチが重要と考える。今後、様々な治療効果を検証する上での礎として、本研究は重要な意味をもつ。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2009 (0), A3O2006-A3O2006, 2010

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680544461952
  • NII論文ID
    130004581635
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.a3o2006.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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