目標を定めたステップ動作時の足部接地位置の変位

DOI
  • 檀辻 雅広
    医療法人協和会 協和マリナホスピタル リハビリテーション科
  • 水田 潤史
    医療法人協和会 協和マリナホスピタル リハビリテーション科
  • 廣川 円香
    医療法人協和会 協和マリナホスピタル リハビリテーション科

書誌事項

タイトル別名
  • 足部の部位により違いはあるのか?

抄録

【目的】日常の臨床場面で,ステップ練習などを行う際に,理学療法士が示した目標に足尖や踵部を合わせるように指示することがある。しかし,実際に振り出された足部の位置と目標に隔たりが見られることが多い。この原因は運動障害や感覚障害など多様な原因が考えられるが,それ以前に足尖や踵部が目標に対して正しく踏み出せているという根拠は乏しい。<BR> そこで今回は,床面に示した目標点に対して振り出した足部接地位置が,目標点とどの程度の変位を生じるのか,また足部の部位によって誤差に違いがあるのかを検証するために健常成人を対象として調査分析を行ったので報告する。<BR>【方法】対象は下肢に整形外科的な障害の既往がない健常成人16名(男性7名,女性9名)とした。平均年齢は29.7±7.8歳,平均身長は164.6±9.3cmであった。<BR> 測定方法は,静止立位から床面の方眼紙上に示した目標点に向かって一歩前方にステップ動作を行い,あらかじめ足部に付けた指標点から目標点までの誤差を測定した。静止立位は,歩隔を10cm,足角7度の開脚位とした。床面に示す目標点は,ヒトがゆっくりと歩行したときの平均歩幅と報告されている0.37×身長の幅とし,ステップ側の踵骨後端中央の垂直線上に目印をつけた。足部の指標点は,母趾先端中央(以下,A点)第1中足指節間関節(以下,B点),踵骨後端中央(以下,C点),第5中足指節間関節(以下,D点)とした。<BR> 測定手順は,1)被験者に指標点を伝えた後,5秒間目標点を注視してもらう。2)足下を視覚遮断し,足部の指標点を目標点に合わすようにステップ動作を行う。3)目標点からの誤差を測定後,静止立位姿勢に戻る,とした。尚,被験者には結果のフィードバックを行わないこととした。試行は足部の指標ごとに5回,順序は無作為で行った。<BR> 測定は,目標点を中心とした内外側方向をX軸,前後方向をY軸として指標点の接地位置を計測し,目標点からの誤差を算定した。統計分析は,目標点を中心とした指標点ごとの接地位置の分布と,目標点までの誤差を一元配置分散分析,2サンプル比率検定を用い,有意水準を5%未満として比較検討した。<BR>【説明と同意】被験者には個々に本研究の目的と方法を書面で説明し同意を得た。<BR>【結果】足部の各指標のX軸の平均値は,A点が-0.4±2.3cm,B点が-0.6±2.1cm,C点が-0.5±2.1cm,D点が0.2±1.8cmであり,各指標のX軸上での値には有意差は見られなかった。同様にY軸の平均値はA点が2.4±4.1cm,B点が1.1±3.1cm,C点が-3.8±5.0cm,D点が0.5±3.5cmであり,各指標のY軸上での値には有意差を認め,C点はA,B,D点よりも後方に変位していた(p<0.01)。<BR> 足部の各指標から目標点までの誤差の平均値は,A点が4.2±3.0cm,B点が3.1±2.3cm,C点が4.9±3.3cm,D点が2.9±2.6cmであり,各指標からの誤差の値に有意差を認め,C点はA,B,D点よりも誤差が大きく(p<0.01),A点はD点よりも誤差が大きくなっていた(p<0.05)。<BR> 足部の各指標点の接地位置の分布は,A点はX軸+方向19%,-方向81%,Y軸+方向69%,-方向31%であり,X軸-方向とY軸+方向に多くなっていた(p<0.01)。B点はX軸+方向6%,-方向94%,Y軸+方向56%,-方向44%であり,X軸-方向に多くなっていた(p<0.01)。C点はX軸+方向25%,-方向75%,Y軸+方向25%,-方向75%であり,X軸,Y軸とも-方向に多くなっていた(p<0.01)。D点はX軸+方向38%,-方向63%,Y軸+方向56%,-方向44%であり,有意差は見られなかった。<BR>【考察】今回の結果より,各指標の平均値は目標点からの内外側方向には差は見られなかったが,前後方向は踵骨後端部が目標点より後方に変位することが示された。また,踵骨後端部での誤差が大きくなり,母趾先端部は第5中足指節間関節部よりも誤差が大きくなっていた。さらに,接地位置分布では母趾先端部が前内側方向に,第1中足指節間関節部が内側方向に,踵骨後端部が後内側方向に変位することが示された。<BR> 今後は床面のどこに目標点を定めると求める位置にステップができるかを検討する必要があると考える。<BR>【理学療法学研究としての意義】ステップ練習などで目標点を定める場合に,踵接地を意識させると目標点よりも後方に変位してしまう可能性あるため,第1または第5中足指節間関節部を指標とすることで求める位置に近いステップ幅になることが示唆された。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2009 (0), A4P3063-A4P3063, 2010

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680550246400
  • NII論文ID
    130004581960
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.a4p3063.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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