腰椎疾患を有する特定高齢者候補者の健康関連QOLについて

DOI
  • 神原 清子
    医療法人社団 おると会 浜脇整形外科病院リハビリテーション科
  • 葉 清規
    医療法人社団 おると会 浜脇整形外科病院リハビリテーション科
  • 四海 公貴
    医療法人社団 おると会 浜脇整形外科病院リハビリテーション科
  • 長尾 ひとみ
    医療法人社団 おると会 浜脇整形外科病院リハビリテーション科
  • 松田 考司
    医療法人社団 おると会 浜脇整形外科病院リハビリテーション科
  • 酒井 かおり
    医療法人社団 おると会 浜脇整形外科リハビリセンターリハビリテーション科

抄録

【目的】<BR> 近年、高齢化社会に伴い、介護予防の必要性が高まってきている。特定高齢者把握事業にて実施されている生活機能評価は、年齢とともに現れる心身の衰えや生活機能の低下を早期に発見するための検査である。今回、腰椎疾患を有し、かつ生活機能評価の対象者となる65歳以上の患者の健康関連QOLに関してSF36v2を用い、障害特徴について考察した。<BR>【方法】<BR> H20.5~H21.10の間に当院で腰椎疾患手術を施行した65歳以上の患者64名を対象とし、特定高齢者把握事業で使用されている生活機能評価の基本チェックリストを用いて、特定高齢者の候補者に該当する患者36名(以下、候補者該当群)と、非該当(以下、非該当群)の患者28名に分類した(平均年齢72.3±3.5歳、疾患内訳:腰椎椎間板ヘルニア4名、腰部脊柱管狭窄症44名、腰椎脊椎分離/すべり症16名)。対象患者の手術前にSF36v2の下位尺度値(PF:身体機能、RP:日常役割機能(身体)、BP:体の痛み、GH:全体的健康感、VT:活力、SF:社会生活機能、RE:日常役割機能(精神)、MH:心の健康)を評価し各群で比較検討、また国民標準値(50点)とも比較した。なお、統計学的処理はMann-WhitneyのU検定を使用し、危険率5%未満をもって有意とした。<BR>【説明と同意】<BR> SF36v2配布時にアンケート説明書として同意書を添付し、署名の記入をもって同意とした。<BR>【結果】<BR> 手術前の候補者該当群と非該当群を比較して、GHのみが有意に低値を示した。国民標準値との比較では、両群ともすべての項目において低値を示した。両群とも、PF・RP・BPなど身体的健康度が低い傾向にあった。<BR>【考察】<BR> 国民標準値との比較でどの項目も低値を示したのは、手術前という最も痛みが強い状態であり、痛みのために身体的活動が妨げられることが多かったためと考えられる。候補者該当群と非該当群を比較した場合は、「人より病気になりやすい」「私の健康状態は悪くなるような気がする」といった全体的健康感に有意差があった。これは候補者該当群がより健康状態の悪化を感じやすい状態にあったことを示唆する。今回の結果では、特定高齢者の候補者に該当するしないに関わらず、手術前の身体的健康度は低い傾向にあったが、それは手術によってある程度の改善が見込まれる部分である。今後は手術前後の推移を含めた検討が必要と思われる。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 特定高齢者把握事業で実施されている生活機能評価の基本チェックリストと、SF36v2はどちらも主観的な評価法である。特定高齢者の候補者に該当する患者の健康関連QOLの特徴を把握することは、今後高齢化社会が進むなかでの治療アプローチの一助となると考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2009 (0), C3O2140-C3O2140, 2010

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680549334144
  • NII論文ID
    130004582288
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.c3o2140.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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