小・中学生における視覚機能能力の現状把握

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抄録

【目的】<BR>小・中学校でも部活動が盛んに行われる一方で身体の二極化、すなわち運動不足に伴う生活習慣病と運動過多によるスポーツ障害の多発が社会問題にもなっている。<BR>運動能力は普段の練習から判断可能であるが、視覚機能能力を判断することは難しい。渡辺らは視覚機能能力を高めることは、質の高いトレーニングにもなると述べており、スポーツ障害の予防として運動能力と視覚機能能力高めることも1つではないかと考え、当院では障害予防を目的とし、平成17年よりこどもスポーツ専門外来として運動能力&視覚機能能力の評価を行っている。<BR>今回当院を受診し、野球を行っている小・中学生の視覚機能能力の現状把握する目的にて行い考察を加えたのでここに報告する。<BR>【方法】<BR>当院を受診し医学的問題がなくパソコン操作が行える小・中学生対象。<BR>平均年齢11.9±1.7歳 平均身長153.6±12.5cm 平均体重42.3±11.3kg <BR>小学生57名 中学生27名 計84名 男性84名<BR>有限会社チャイルドライク&スポーツ社製『PERCEPTION TRAINER』使用。<BR>(1)瞬間視 (2)眼球運動 (3)選択反応 (4)知覚判断の4種類をトレーニングモードにて説明し、その後テストモードにて各10問ずつ実施(回答制限時間は10秒)。4種類の正解数・回答時間と総合正解数・総合回答時間の計10項目を小学生・中学生で比較し統計処理を行った。統計処理にはMann-Whitney U検定を用い危険率5%にて有意差を求めた。<BR>【結果】<BR>瞬間視・眼球運動の正解率で有意差が認められた。<BR>選択反応・知覚判断では有意差が認められなかった。<BR>瞬間視・眼球運動の回答時間で有意差が認められた。<BR>選択反応・知覚判断では有意差が認められなかった。<BR>総合正解数・総合回答時間で有意差が認められた。<BR>【考察】<BR>小学生は短時間で回答し瞬間視・眼球運動にて有意差が認められた。これについては2つ考えられ1つ目は視力不良者(1.0未満)が小学生では35%、中学生で53.7%という報告もあり、視力も関わっているのではと考えられるが、今回視力までは把握できていないため今後検討していく。2つ目はスキャモンの曲線でいう神経系のように成熟年齢が早いタイミングで訪れるためではないかとも考えられる。<BR>中学生では知覚判断の正解数が勝っていた。これは見た情報を正しく脳へ伝える判断力が優れていることになる。<BR>石垣らは小中学生の卓球選手にてスポーツビジョンを研究しており、卓球暦が長いと周辺視野が優れていると報告しており、田中らも中学生ハンドボール選手の運動視機能を研究しており、正選手群と補欠選手群では有意差があったことを報告している。ここでも運動経験が長い選手ほど高いと報告している。野球でも先行研究と同様に野球暦(小学生で経験年数は2.80年・中学生は3.75年)が長い中学生の周辺視野(知覚判断)が高得点であった。<BR>瞬間視・眼球運動が優れていたとしても情報を素早く伝達できなければ、一般的にスポーツで注目されている周辺視野(知覚判断)は獲得されにくく、スポーツ暦で左右されることになった。<BR>パフォーマンスは体を動かすスキルだけではなく、シュートや打撃など、動作にけるパフォーマンスが必要であり、眼で得た情報を脳で処理し、次にどう行動するのかを決め、普段の練習では意識されることのない部分であり、アスリートにはとても重要な能力である。技術的能力と同様トレーニングすることが必要である。 <BR>スポーツでは、「観て」、「判断」することが重要であり、視覚で得た情報を脳に素早く伝達し、状況判断が下され、パフォーマンスへと移行する。これは眼で観た情報を脳が認識する過程を「インプット機構」、脳で処理する過程を「トラスト機構」、筋肉に指令を出す過程を「アウトプット機構」といい、渡辺らはトップアスリートになるためには重要な条件であり、広い視野と瞬時の判断は、人間の内部機能のトレーニングで著しく強化されると報告している。そこに大きく関わる要素が眼球運動と言われるもので、視覚機能能力を日々トレーニングすることが障害予防につながって行くのではないかと考える。このような知覚反応のスキルと体を巧みに動かす身体的なスキルの両方が必要である。今回は現状を把握するためであり、今後はケガをしたこども達との比較・視力の評価・身体機能・他のスポーツ間での関連を検討しスポーツ障害予防へ貢献していきたい。<BR><BR><BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2009 (0), C4P1165-C4P1165, 2010

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205572952448
  • NII論文ID
    130004582417
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.c4p1165.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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