41℃カルシウム硫酸塩泉水の温浴中の効果について

DOI
  • 飯田 員頒
    箱根リハビリテーション病院リハビリテーション科
  • 藤平 真二
    箱根リハビリテーション病院リハビリテーション科
  • 堀内 典彦
    箱根リハビリテーション病院リハビリテーション科
  • 三橋 隆史
    箱根リハビリテーション病院リハビリテーション科
  • 福本 修也
    箱根リハビリテーション病院リハビリテーション科
  • 高橋 洋平
    箱根リハビリテーション病院リハビリテーション科
  • 杉山 静香
    箱根リハビリテーション病院リハビリテーション科
  • 清水 絵里加
    箱根リハビリテーション病院リハビリテーション科

抄録

【目的】温泉には病気を治したり傷を治したりする作用があることが知られている。その作用が何に由来するのかを研究すべく、温泉成分を分析し、どの成分がどの効果と関連するか、すなわち、温泉の特異性が追求された。しかしながら、50年を経て温泉の特異性は否定されているものの、当院では、機械浴および一般浴での入浴時に温泉を利用している。また、安静時に疼痛の訴えの強い患者さんや、緊張が強く動作を遂行困難な患者さんに対して浴槽内での個別訓練を施行していると、訓練時の患者さんの訴えとして、入浴直後から痛みが軽くなり、気持ちが良いということや、運動が行いやすくなるという意見を聴取する機会が多い。そのため、温泉浴における入浴中の変化について疼痛の緩和や、関節可動域の変化について温泉の効果を水道水と比較検討するために本実験を行った。<BR>【方法】対象は、健常成人男性24名であり、22.54±3.38歳であった。被験者は、Tシャツと水着にて測定した。測定手順は、くじを引き温泉水または、水道水のどちらから先に行うかを決める。入浴前と入浴中と入浴後での3回測定可能なものを行う。入浴前は、訓練室にて安静背臥位をとり、心拍数の一定を確認して測定開始し、入浴中は水深67cmでカルシウム硫酸塩泉水と水道水ともに水温41°Cの大浴場の浴槽に全身5分間入浴しその後は,入水したまま測定をした。入浴後は訓練室にて安静背臥位で心拍数の一定を確認してから測定開始した。<BR>測定項目は、1、長座位体前屈2、感覚閾値3、疼痛閾値の測定を行った。<BR>1、の測定は、陸上では足関節が背屈0度に設定し大腿と下腿それぞれ1名づつ固定を行った。被験者は、両手掌を合わせ体幹を前方に倒す。そして、入浴中での測定は,水深67cmの浴槽で上前腸骨棘が入水している状態で測定ができるように、高さ調節可能な介助用の椅子の上に板をひき、長座位にて測定を行った。足関節の背屈角度は、陸上同様に背屈0度となるように板を浴槽の壁に付け測定した。<BR>2、・3、の測定は、CEFAR製PAINMATCHER(以下PM)を使用して行う。PMの左側にある電極を左母指と示指で強くつまむと,周波数10Hz,強さ10mAの矩形波の刺激が生じる。電極をつまみ続けると,持続時聞か0μsから7.5μs毎に450μsまで60段階に痛み刺激を増加させることができる。測定対象が、ピリピリと感じられた所を感覚閾値とし、疼痛と一致するまでを疼痛閾値の測定値とした。<BR>【説明と同意】被験者に対しては、実験前に温熱作用として、血管拡張作用があり、血圧の低下、心拍増加などの変化がある事を説明し、理解できたことを確認し同意をえた。また実験当日は、水着を本人に用意していただき、実験当日に用意してきたもののみ実験を行った。<BR>【結果】長座位体前屈においては、温泉水と水道水ともに入浴前に比べ入浴中及び入浴後において有意な差が認められた。<BR>また、温泉水と水道水の疼痛閾値の変化において5%で有意な差を認めた。<BR>そして、温泉水における疼痛閾値の変化は、Wilcoxonの符号付順位和検定により入浴前と入浴中での変化が、5%で有意な差を認めた。<BR>【考察】温泉入浴における疼痛閾値の変化では、温浴中では水道水に比べ急速に身体に十分な温熱エネルギーを与えることが可能となり疼痛閾値の上昇につながったと考えた。またこの事は、熱エネルギーの吸収が良いため長時間の入浴は、循環動態に対しのリスクも考慮する必要がある。そして、温泉水および水道水での長座位体前屈の変化については、大きな浴槽に入浴することで、全身的なリラクゼーション効果により変化したと考えた。以上のことから温熱エネルギーは、温泉浴の場合5分程度より効果が認められ、疼痛閾値の上昇に繋がる事が示唆された。<BR>【理学療法学研究としての意義】Baloghらは、シングルブラインドの臨床研究で、30名の慢性腰痛患者に硫酸塩泉と水道水をそれぞれ15日間受けた場合について比較し、鎮痛や可動性において前者が、後者より優れていることを示すような入浴前後での身体変化を比較した文献は多くある。そして、温泉の効果についても疾患別に述べられていたり、温泉成分の特有の効果について述べられてきた。しかし今回は、温浴中の変化について注目し、温泉浴中の疼痛閾値が上昇することから、強い疼痛のある患者さんに対して心拍の上昇や血圧の下降に注意しながら入浴中に体操や自動運動を行うことで、広い可動範囲での動作が行え、満足のいく運動療法に繋げられていける。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2009 (0), F4P2302-F4P2302, 2010

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680550640512
  • NII論文ID
    130004582926
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.f4p2302.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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