生活機能の自立した地域在住高齢者の外出頻度の変化を予測する指標の検討

DOI
  • 大滝 雄介
    医療法人社団 三喜会 鶴巻温泉病院 リハビリテーション部
  • 石原 拓郎
    医療法人社団 三喜会 鶴巻温泉病院 リハビリテーション部
  • 大木 雄一
    医療法人社団 三喜会 鶴巻温泉病院 リハビリテーション部

書誌事項

タイトル別名
  • -ベースライン時の評価から12ヵ月後の外出頻度の変化を予測する-

この論文をさがす

抄録

【目的】2006年の介護保険制度改正後,新たに介護予防事業の一つとして盛り込まれた閉じこもり予防は,要支援及び要介護状態への進行を防止する上で重要であると言われている.一方で,地域在住高齢者の閉じこもり予防に関する指標の一つである外出頻度は,身体的・心理社会的要因及び環境要因などの多面的な要因が密接に関わっていることは明らかなものの,将来的な外出頻度を予測する指標の検討は十分になされていないのが現状である.そこで本研究は,生活機能の自立した地域在住高齢者を対象にベースライン時の身体的・心理社会的要因及び環境要因から12ヵ月後の外出頻度の変化を予測出来る指標を得ることを目的とした.【方法】対象は,平成23年10月(ベースライン時)にA町役場主催の運動教室及び機能練習教室に参加している地域在住高齢者61名(男性11名・女性50名)のうち,65歳以上で生活機能が自立(介護保険未利用で,歩行・食事・排泄・入浴・着替えの基本的日常生活動作5項目及び老研式活動能力指標13項目が全て自立)している49名(男性5名・女性44名)とし、ベースライン時から12ヶ月後の外出頻度の変化別に外出頻度低下群(B群:22名)と外出頻度非低下(維持含む)群(C群:27名)の2群に分類した.ベースライン時の測定項目は,基礎情報として年齢・性別・運動習慣・喫煙歴・過去1年間の既往歴,身体的要因としてbody mass index(BMI)・等尺性膝伸展筋力(筋力)・長座位体前屈・Functional Reach Test(FRT)・シャトルウォーキングテスト(SWT),心理社会的要因として同居者の有無・普通自動車免許の有無・MOS Short-Form 36-Item Health Survey(SF-36),環境要因として自宅から最寄り駅までの徒歩による所要時間(分)・住宅改修の有無とした.外出頻度は「外出先,移動距離,外出目的は問わず,自宅敷地内から外に出る行動」と定義し,「一週間のうち,外出する日は何日ありますか」と尋ねた.筋力はアニマ社製マイクロFETにて左右2回ずつ測定し,最大値を採用した.長座位体前屈は2回測定したうちの最大値を採用した.FRTは原法に準じて2回測定し、最大値を採用した.SWTはシャトルウォーキングテスト日本語版に準じて実施した.SF-36はSF-36V2日本語版を用い,サマリースコア(「Physical Component Summary:PCS」と「Mental Component Summary:MCS」の2つの因子得点)を算出した.統計処理は,各測定項目の群間比較(Mann-Whitney U検定及びχ2検定)を実施した.次に有意差を認めた測定項目を独立変数,外出頻度の変化を従属変数とし,ステップワイズ法を用いたロジスティック回帰分析を実施した.有意水準は全て5%未満とした.【説明と同意】各対象者に事前に本研究の主旨と個人情報保護を遵守することを文書及び口頭で説明し,同意を得た(当院の臨床研究倫理審査委員会における承認番号64).【結果】群間比較の結果,年齢(B群74.6±5.7,C群71.0±3.6,平均値±標準偏差),FRT(B群30.4±5.87,C群37.4±4.93,平均値±標準偏差),SWT(B群36.3±15.8,C群50.5±8.5,平均値±標準偏差),PCS(A群44.9±11.3,B群50.7±6.2,平均値±標準偏差),過去1年間の既往歴(癌),運動習慣の有無,普通自動車免許の有無で有意差を認めた(p<0.05).次に有意差を認めた測定項目を独立変数,外出頻度の変化を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った結果,普通自動車免許の有無(オッズ比0.03,95%信頼区間0.003-0.198)とFRT(オッズ比0.71,95%信頼区間0.53-0.93)の2因子が選択され,【(12ヵ月後の外出頻度の変化)=-3.765×普通自動車免許の有無(有1,無0)-0.350×FRT(cm)+13.340】という予測式(判別的中率87.8%)が得られた.【考察】生活機能の自立した地域在住高齢者の12ヵ月後の外出頻度の変化を予測する指標として,普通自動車免許の有無とFRTの値を基にした比較的簡便で判断しやすい予測指標が得られたことは,介護予防事業等における活用に非常に有用なものと考える.一方で,得られた予測因子の一つが「普通自動車免許の有無」であったことから,「自宅敷地内から外に出る行動」と定義した今回の外出頻度に対し,対象者の生活機能が高く、外出範囲が広域であったことも考えられたため,今後はさらに外出頻度の定義・対象者の取り込み基準の再考も含めた検討を進める必要があると考える.【理学療法学研究としての意義】本研究で得られた予測指標は,生活機能の自立した地域在住高齢者の12ヵ月後の外出頻度の変化をある程度の精度で予測でき,外出頻度の低下による要支援及び要介護状態への進行の予防に繋がる可能性がある点で意義のある研究と考える.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2012 (0), 48100132-48100132, 2013

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ