骨格筋間連結が膝伸筋の筋出力に及ぼす影響について

DOI
  • 石井 禎基
    姫路獨協大学 医療保健学部 理学療法学科
  • 崎田 正博
    京都橘大学 健康科学部 理学療法学科
  • 笹井 宣昌
    鈴鹿医療科学大学 保健衛生学部 理学療法学科
  • 福田 智之
    医療法人仁寿会 石川病院 リハビリテーション室
  • 佐野 俊
    姫路獨協大学 医療保健学部 理学療法学科
  • 前河 大輝
    姫路獨協大学 医療保健学部 理学療法学科
  • 吉岡 晴香
    姫路獨協大学 医療保健学部 理学療法学科
  • 土屋 禎三
    帝京平成大学 健康メディカル学部 言語聴覚学科

抄録

【はじめに、目的】骨格筋は筋外膜に覆われており、複数の骨格筋はさらに筋外の結合組織(広義の筋膜に含まれる)により互いに連結(以下、筋間連結)されている。我々は膝伸筋の筋長とその発生張力との間の関係について in vivo の実験を行っており、第46 回および第47 回の本大会において膝伸筋と他筋との筋間連結が膝伸筋の筋力を効率よく出力させる働きがあり、身体パフォーマンスにとって重要な役割を担っていることを報告した。本研究ではその筋間連結が筋出力に及ぼす影響をより詳しく調べるために実験を行った。【方法】実験には15 匹のウシガエル(Rana catesbeiana)(体長:127 ± 6 mm)の膝伸筋である大腿三頭筋(ヒトの大腿四頭筋にあたり前大腿直筋および内・外側広筋の3 筋からなる)の内・外側広筋を膝伸筋標本として用いた。ウレタンを用いて腹腔内投与により麻酔した後、坐骨神経を尾骨部分から露出させ、さらに大腿部を覆っている筋膜をできるだけ温存しながら内・外側広筋の支配神経分枝だけを残して、他筋への分枝をすべて切断した。カエルを実験バスに固定し、大腿三頭筋腱に取り付けたフックを張力計に固定をした。適宜標本の筋長を変えて十分な強度の電気刺激(60 Hz, 0.5 s)を坐骨神経に与え、そのときに発生した内・外側広筋の等尺性強縮張力をオシロスコープにて記録した。同時に高速度CCDビデオカメラで撮影し、張力発生時の筋長を動画解析ソフト(デジモ、大阪)を用いて解析した。標本は、その上面を前大腿直筋、下面を股関節内転筋群およびハムストリングスと筋間連結をしている。実験は、(1)標本上下の筋間連結を温存した条件(以下、連結条件)(N=5)、(2)標本上面の前大腿直筋を切離した条件(以下、上面切離)(N=5)、(3)標本下面の筋群を切離した条件(以下、下面切離)(N=5)の3 条件で行い、それぞれの長さ‐張力関係を比較し検討した。張力データは各標本の最大張力、そして筋長データは大腿骨長(大腿骨頭−膝関節面)でそれぞれ除して正規化した。実験中はSpO2 を確認しながら呼吸管理を行った。実験はすべて20 ± 0.5 0 Cの温度条件下で行った。【倫理的配慮、説明と同意】本研究に際して、事前に本学の動物実験委員会の承認(許可番号:H22-07 号)を得た後、実験動物に苦痛を与えないようにして実験を行った。【結果】「連結条件」、「上面切離」、「下面切離」の3 条件における膝伸筋標本の長さ−張力関係は、それぞれ筋長が約0.74 -1.00、筋長が約0.74 - 0.97、筋長が約0.82 - 1.14 の範囲内で観察された。(1)「連結条件」の収縮張力曲線は、約0.74 から緩やかに上昇しはじめ、約0,78 より増加率が増大し約0.93 で最大に達した後、下行脚になった。静止張力は約0.83 より増大しはじめた。(2)「上面切離」の収縮張力曲線は約0.74 より増大し約0.91 で最大に達した後、下行脚になった。静止張力は約0.83より緩やかに増加し約0.88 から増加率が増大した。(3)「下面切離」の収縮張力曲線は約0.82 より緩やかに発生し約0.88 より急速に増大して約1.04 で最大に達した。その後下行脚になった。静止張力は約0.90 より緩やかに上昇しはじめ約0.98 より急速に増大した。また、生体内の潜在的な筋長範囲(股関節屈曲・膝関節伸展−股関節伸展・膝関節屈曲)は約0.78 - 0.88であった。跳躍直前の筋長は約0.83 であった。【考察】本研究では、標本として用いた膝伸筋標本(内・外側広筋)の2 筋は大きな羽状角をもつ羽状筋である。それらが大腿直筋およびハムストリングスと筋膜を介して筋間連結をしている。本研究では、筋間連結が筋出力に与える影響を3 つの実験条件により比較検討した。その結果「下面切離」の収縮張力は「連結条件」よりも著しく右方向(より長い筋長)で発生したが、「上面切離」では逆に「連結条件」よりも左方向(より短い筋長)から収縮張力が生じた。また、静止張力は「連結条件」、「上面切離」、「下面切離」の順に短い筋長から発生した。これらの実験結果は、筋間連結の部位によって膝伸筋内部構造の筋束長および羽状角に与える影響が異なること示しており、膝伸筋標本上部の筋間連結と下部の筋間連結とでは筋出力に対する作用が異なることを示唆している。【理学療法学研究としての意義】本研究結果は、筋間連結の機能的役割の1 つを示した基礎的な事実であり、理学療法臨床場面で考察する上で基礎となるものと考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2012 (0), 48100288-48100288, 2013

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報

  • CRID
    1390282680550478336
  • NII論文ID
    130004584830
  • DOI
    10.14900/cjpt.2012.0.48100288.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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