気管支喘息重積発作後、ICU-AWを呈した症例に対する急性期リハビリテーションの一例

DOI
  • 本田 優志
    社会医療法人財団池友会 福岡新水巻病院 リハビリテーション科
  • 音地 亮
    社会医療法人財団池友会 福岡新水巻病院 リハビリテーション科

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抄録

【はじめに、目的】  jonjueらの報告(2007)によると、近年廃用性筋萎縮とは病態が異なるICU acquired weakness(以下:ICU-AW)が注目されている。ICU-AWとは、敗血症・多臓器不全・人工呼吸器離脱困難例の46%にニューロパチー・ミオパチーが存在することが報告されている。今回、気管支喘息重積発作の治療において人工呼吸器管理・ステロイドパルス療法を行い、その後にICUーAW症状を呈した症例を担当した。そこで、急性期段階における早期リハビリテーション(以下:リハ)の介入が機能予後の改善に効果があった為ここに報告する。【方法】 症例発表。42歳男性、身長:155cm、体重:57kg、BMI : 23.7、診断名 : 気管支喘息重積発作、現病歴 :買い物中に胸痛・呼吸苦を訴え倒れ、意識混濁している為救急搬送。当院救急外来にて経鼻挿管施行し人工呼吸器管理(サーボ900)となり、鎮静剤(プロポフォール)と筋弛緩薬(フォーレン)を併用、ステロイドパルス療法を施行。10病日目より廃用症候群予防目的にリハビリ開始となる。既往歴:数年前に同疾患で入院歴あり。喫煙歴 : 20本/日×20年間。(Brinkman指数:400)【倫理的配慮、説明と同意】本症例には今回の発表の主旨を説明し、同意を得た。【結果】 リハ介入初期時、Richmand Agitation-Sedation Scale(RASS):-5と完全鎮静状態であり、呼吸器と同調した状態であった。両肺野Wheeze著明に聴取され、気道内分泌物多いため排痰目的にて体位ドレナージ中心に介入した。この時、動脈血液ガス分析ではPaCO2:56.5mmHg、PaO2:89.8mmHgとPaCO2の貯留を認めた。そして呼吸器設定をPCVからSIMVへ変更し自発呼吸の出現を認め、徐々に鎮静剤の減量を図り意識レベルの改善と共にPaCO2:39.9mmHg、PaO2:76.7mmHgとなり、23病日目に人工呼吸器離脱し抜管となった。意識レベル清明となるが(JCS:1-3)、ICU-AWの指標となるMRC Scale for Muscle Examination(以下:MRC Scale):12/60点と重度筋力低下を呈した。ADL全介助:Barthel Index(以下:B.I)0点(コミュニケーション可・頚部保持困難)、Performance Status(以下:PS) grade4、握力:0/0kg(右/左)であった。26病日目より車椅子離床練習開始し、tilt tableや低周波療法を施行し上下肢共に筋収縮を促していった。31病日目より栄養士と連携をとり、タンパク質摂取増大目的にてリハ直後にプロテインMAXの補給を促した。40病日目より平行棒内起立練習(重度介助)・車椅子駆動練習を追加、上肢筋を中心に徐々に筋力向上が見られ、最終的にMRC Scale: 26/60点、B.I:20点、PS: grade3、端座位保持:物的介助と若干の改善を認め、リハ目的に46病日目に転院となった。その後95病日目に自宅退院、104病日目に当院外来診察時に握力:23/21.5kg(右/左)、独歩自立、B.I:100点とADL自立となる。【考察】 ICU-AWの原因としてWillimら(2007)は、長期人工呼吸器管理・ステロイド大量投与・筋弛緩剤の使用があると述べている。気管支喘息重積発作の死亡率は38%と高く、急性期から適切な呼吸管理や薬剤投与は必須である。本症例は気管支喘息重積発作後の治療後に、ICU-AW症状である(1)全身左右対称性で弛緩性麻痺(2)MRC scale48点未満(3)人工呼吸器離脱困難を呈した。Joerg ら(2010)は、ICU-AWの治療として早期離床・早期リハの介入は重要であると述べている。今回、急性期段階での回復具合はわずかであったが早期からの積極的な介入により、最終的にADL自立レベルまで改善を認めた。今後は再発防止のために禁煙などの患者教育も重要となってくると考える。 【理学療法学研究としての意義】 ICU-AWの治療として、急性期からの積極的な運動療法は、身体機能回復に有効であることが示唆された。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2012 (0), 48100433-48100433, 2013

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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