回復期リハビリテーション病棟における脳卒中片麻痺患者の重症度別運動麻痺の経時変化

DOI
  • 村井 歩志
    藤田保健衛生大学七栗サナトリウム リハビリテーション部
  • 渡邉 誠
    藤田保健衛生大学七栗サナトリウム リハビリテーション部
  • 奥山 夕子
    藤田保健衛生大学七栗サナトリウム リハビリテーション部
  • 佐々木 祥
    藤田保健衛生大学七栗サナトリウム リハビリテーション部
  • 園田 茂
    藤田保健衛生大学七栗サナトリウム リハビリテーション部 藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学II講座

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抄録

【はじめに】 脳卒中片麻痺患者の運動麻痺の経過報告は散見されるが,運動麻痺の重症度別に経過を示した報告は少ない.そこで今回,我々は当院で回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中片麻痺患者の運動麻痺の経時変化を重症度別に追跡したので報告する.【方法】 対象は当院回復期リハビリテーション病棟に2004年9月以降入院し,2012年3月までに退院しFull-time Integrated Treatment Programを実施したテント上に一側性病変を有する初発脳卒中片麻痺患者1950名である.重篤な併存症もしくは入院中に再発,急変を認めた150名,発症から当院入院までの期間が61日以上の120名を除外した1680名を対象とし,この中から,入院から8週間以上入院し,主要データが欠損していない923名を最終的に選択した.内訳は年齢66.5±12.6歳,性別は男性540名,女性383名,発症後から当院入院までの期間が34.8±12.3日,原疾患は脳梗塞418名,脳出血505名,麻痺側は右463名,左460名,平均在院日数は86.0±43.5日であった.運動麻痺の評価は,当院入院時から2週毎にStroke Impairment Assessment Set(以下,SIAS)の麻痺側運動機能である上肢近位Knee-Mouth(以下,KM),上肢近位Finger-Function(以下,FF),下肢近位Hip-Flexion(以下,HF),下肢近位Knee-extension(以下,KE),下肢遠位Foot-Pat(以下,FP)の5項目を評価した.得られた結果をもとに,1)SIAS麻痺側運動機能を項目別に入院時から8週時までの1点以上改善した割合を算出した.さらに,2)入院時のSIAS麻痺側運動機能の得点別(0~4点)に層別化し,各得点層における8週時までの1点以上改善した割合を算出した.【説明と同意】 患者情報の学術的使用に関する同意は入院時に書面で確認した.【結果】 1) SIAS麻痺側運動機能の得点が入院時から8週時までに1点以上改善した割合は,KM40.9%,FF31.6%,HF60.2%,KE53.9%,FP42.3%であった. 2)入院時SIAS麻痺側運動機能の得点別(0~4点)に層別化し,8週時までに1点以上改善した割合は,KMで0点層:41.7%,1点層:43.0%, 2点層:45.1%, 3点層:48.5%, 4点層:16.5%,FFで0点層:28.0%,1点層:33.5%, 2点層:62.5%, 3点層:56.8%, 4点層:16.1%であった.HFで0点層:67.7%,1点層:69.9%, 2点層:65.7%, 3点層:64.4%, 4点層:26.7%,FPで0点層:35.0%,1点層:64.5%, 2点層:63.3%, 3点層:54.0%, 4点層:19.3%であった.KEはHFとほぼ同様の傾向を示した.【考察】 本研究では,歩行やADLを主体に,また,1日中活動的な状況での脳卒中片麻痺患者における運動麻痺の経時変化を追跡した.今回の検討では,運動麻痺は,下肢よりも上肢,近位より遠位が改善しにくいという傾向がみられた.また,上下肢とも近位は重度麻痺と中等度麻痺に関わらず改善割合は同程度であったが,遠位は重度麻痺の改善割合が中等度麻痺より低い傾向を示した.下肢の運動麻痺の改善が上肢より高かったのは,下肢は上肢に比べ立位,歩行で使用するため使用頻度が関係していることが考えられた.上下肢遠位で重度麻痺の改善率が低かったのは,重度麻痺になると装具の使用や片手での動作練習が主になるため,中等度以上の麻痺に比べ麻痺肢を使用する頻度がより少なかったのであろう.また,上下肢すべての項目で軽度麻痺の改善割合が低かった理由には,天井効果が寄与していることが考えられた.【理学療法学研究の意義】 今回の研究より,回復期リハビリテーション病棟に入院した初発脳卒中片麻痺患者の入院時から8週時までの運動麻痺の経時変化を追跡することができた.各部位と重症度別に運動麻痺の経時変化を明示したため,理学療法のプランニングの一助になる.また,介入研究をする際の,比較されるデータとして重要である.今後は,運動麻痺の改善に関わる因子分析,疾患による違いの分析を行っていきたい.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2012 (0), 48100659-48100659, 2013

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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