インターバルトレーニングにおける運動間の回復様式が代謝・交感神経活動に及ぼす影響

DOI
  • 山﨑 一史
    菊川市立総合病院 リハビリテーション科 聖隷クリストファー大学大学院 リハビリテーション科学研究科
  • 西田 裕介
    聖隷クリストファー大学

抄録

【はじめに、目的】インターバルトレーニング(IT)は運動期(Ex)と回復期(Recovery)が混合する運動様式であり,中等度の持久運動と比べて優れた身体機能の改善が報告されている。運動を反復すると身体への負担が増加し,交感神経活動は増加する。心疾患患者における運動中の交感神経活動の過剰亢進は心血管イベントの発生と関連しており,実際にITを心疾患患者に行う際には運動中・後の過剰な交感神経活動による心血管イベントなどのリスクを考慮した運動負荷強度と回復方法の設定が必要である。運動後のPassive Cycleによって静脈還流量を維持し,心負荷を軽減することによる交感神経活動の抑制と酸素負債を減少させる可能性があり,運動の反復による交感神経活動の増加を抑制すると考えられる。本研究はITの回復期におけるActive CycleとPassive Cycleを用いて代謝・交感神経活動の観点より効果的な回復方法を検討した。【方法】対象は健常男性14 名。年齢(21.9 ± 2.9 歳),BMI(21.8 ± 1.9kg/m2)。嫌気性代謝閾値(AT)の測定のため,ramp負荷での心肺運動負荷試験(CPX)を行った。プロトコルは運動期(Ex1)6 分,回復期(Recovery)3 分,運動期(Ex2)6 分とした。Ex1 とEx2 の運動負荷は80%ATとし,回復期は安静座位(Rest Sit;RS)条件と10wattのペダル運動のActive Cycle(AC)条件,他動のペダル運動のPassive Cycle(PC)条件の3 条件を設定し,呼吸統制を行った(吸気:呼気=2:2)。3 条件の順序は無作為に行った。IT中の酸素摂取動態(V(dot)O2)と心電図のR-R間隔より心拍変動(HRV)を測定した。V(dot)O2からV(dot)O2τ-onとV(dot)O2τ-off を算出した。HRV から低周波成分HFと高周波成分LFの比 LF/HF を算出し,心臓交感神経活動の指標とした。V(dot)O2と心拍数より酸素脈(O2Pulse)を算出し一回拍出量の指標とした。統計解析は3 条件間の各指標に対して一元配置分散分析を用い,有意差を認めた指標に対してTukey の多重比較検定を用いた。危険率 5% 未満を有意と判断した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は聖隷クリストファー大学大学院の倫理委員会の承認を得ており,対象者に対して説明文書を用いて十分な説明を行い,同意を得た上で実施した。【結果】LF/HFはRS条件のみでEx1 に比べてEx2 で有意な増加を示した(P<0.05)。運動期の交感神経活動の差LF/HF(Ex2-1)はRS条件と他の2 条件に有意差を認め,AC条件とPC条件に有意差を認めなかった(RS;1.6 ± 1.4,AC;0.0 ± 1.2,PC;-0.4 ± 1.2)。LF/HF(Recovery)は3 条件で有意差を認めなかった(RS;0.6 ± 0.3,AC;0.4 ± 0.3,PC;0.4 ± 0.4)。V(dot)O2τ-off(sec)はAC条件が他の2 条件よりも有意に遅延していた(RS;40.5 ± 6.1,AC;46.3 ± 4.9,PC;44.8 ± 5.4)。回復期の平均O2 Pulse(ml/beat)はRS条件と他の2 条件に有意差を認め,AC条件とPC条件に有意差を認めなかった(RS;5.2 ± 1.1,AC;6.6 ± 1.0,PC;6.2 ± 1.1)。【考察】ActiveとPassive Cycleは同等の一回拍出量を維持することができ,ITにおけるEx2 の交感神経活動を増加させないことが示された。したがって,交感神経活動に着目した場合にActive Cycle,Passive Cycleは有効な回復手段であることが示唆された。回復期の身体負荷が大きい場合,運動継続時間やパフォーマンスの低下が報告されている。したがって,酸素摂取動態の結果より身体負荷量に着目した場合,Passive CycleはActive Cycleよりも身体負荷量が少ないため有効であると考えられる。【理学療法学研究としての意義】ITはその高い機能改善効果の反面,身体へのリスクの観点から臨床応用がされにくい。しかし,心血管イベントや心機能悪化と関連する交感神経活動を抑制することのできる介入は心疾患患者の運動および治療介入の開発に寄与する可能性がある。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2012 (0), 48101329-48101329, 2013

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205576722176
  • NII論文ID
    130004585594
  • DOI
    10.14900/cjpt.2012.0.48101329.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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