変形性膝関節症における単脚支持移行期の運動学的評価

DOI
  • 合津 卓朗
    社会医療法人玄真堂 かわしまクリニック リハビリテーション科
  • 徳田 一貫
    社会医療法人玄真堂 かわしまクリニック リハビリテーション科 広島大学大学院保健学研究科 保健学専攻博士課程前期
  • 羽田 清貴
    社会医療法人玄真堂 川嶌整形外科病院 リハビリテーション科
  • 田中 泰山
    社会医療法人玄真堂 川嶌整形外科病院 リハビリテーション科
  • 吉田 研吾
    社会医療法人玄真堂 川嶌整形外科病院 リハビリテーション科

書誌事項

タイトル別名
  • モーションレコーダ,3次元動作解析装置,表面筋電計を用いて

抄録

【目的】 臨床において,変形性膝関節症(Knee osteoarthritis:以下,膝OA)患者の症状として,荷重時の膝痛を訴えることが多い.そこで我々は,下肢荷重対応の簡易評価として片脚立位動作を指標としている.しかし,我々の渉猟の範囲では,膝OAにおける片脚立位時の運動学的解析や筋電図学的解析を行った報告はない.そこで本研究は,膝OA患者の片脚立位動作における単脚支持移行期のバイオメカニクス的特徴を捉えることで,理学療法アプローチの指標とすることを目的として行った.【方法】 被検者は膝OA群13人 (66.6±7.4歳,K/L分類:gradeI:5人,gradeⅡ:5人,gradeⅢ:3人,gradeⅣ:1人,身長158.6±6.3cm,体重55.6±4.4kg),過去に膝関節痛の経験を有さない対象群10人 (56.1±6.8歳,身長153.5±7.0cm,体重63.4±16.9kg)である. 課題動作は,膝OA側の下肢を支持脚(両膝OAの場合は,より疼痛の強い下肢)とし,重心動揺計(アニマ社製)上で両上肢を体幹前方で組んだ状態から,検者の合図から5秒間の片脚立位保持(5秒未満で遊脚側が接地した場合は,接地を動作終了とした)を計3回行った.下腿側方加速度の測定は,8チャンネル小型無線モーションレコーダ(Microstone社製,MVP-RF8)を大腿の質量中心部と下腿の質量中心部に相当する部位(共に同部位の遠位から57%の位置)の二ヵ所にそれぞれ装着し測定した.下肢の各体節角度の測定は,臨床歩行分析研究会が推奨する方法に準拠して,身体各部位の計22か所に直径30mmの反射マーカーを貼付し,3次元動作解析装置Kinema Tracer(キッセイコムテック社製)を使用し,身体運動を計測した後に得られた位置データから関節中心点座標を算出して,片脚立位動作時の各体節角度を求めた.同時に下肢筋群の筋活動を測定するために,表面筋電計km-Mercury (メディエリアサポート社製)を使用した.サンプリング周波数は1000Hzとし,被検筋は,大殿筋,中殿筋,大腿直筋,内側広筋の計4筋とした.各被検筋の徒手最大収縮時の積分値(IEMG)を求め,動作時のIEMGは,徒手最大収縮時のIEMGに対する筋活動の割合(%IEMG)を算出した.解析区間は,重心動揺計より得られた足圧中心を基に,動作開始は足圧中心が遊脚側へ動き出す瞬間を(α),足圧中心が遊脚側へ最大移動した瞬間を(β),遊脚側の踵離地の瞬間(床反力OFFの瞬間)を動作終了(θ)とした.(α)から(β)を第I相,(β)から(θ)を第Ⅱ相とした.また,同期ケーブルにて同期を行い,各データの時間が異なるため100%に正規化し,各試行3回の平均値を代表値として解析を行い,下腿内外方傾斜加速度,下腿外方傾斜角度,下肢筋活動,股関節内外転角度を各相で解析,比較検討した.両群間の差の検定において,統計処理ソフトR2.8.1を使用し,正規性を認めた場合は二標本t検定,その他はMann-WhitneyのU検定を行った.なお危険率は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は,当院倫理委員会の了承を得て行った.また,研究に先立ち,文章による説明を行い同意が得られた後に行った.【結果】 第Ⅱ相における大腿直筋活動は,膝OA群が対象群よりも有意に大きかった(p<0.05).第Ⅱ相における立脚側股関節内転角度は,膝OA群が対象群より有意に小さかった(p<0.05).下腿外方傾斜加速度は,膝OA群と対象群間での有意差は認めなかった.下腿外方傾斜角度は,膝OA群と対象群間での有意差は認めなかった.【考察】 今回の結果からは,片脚立位動作時の運動制御として,下腿傾斜角度および加速度では有意差を認めなかった.その要因として,膝OAの重症度が比較的軽度であったことや膝OAの初期では膝関節に加わる衝撃の軽減を図る対応行っていると推察した.膝OA群は単脚支持に移行する際,大腿直筋の過剰収縮により膝関節の安定化を図り,股関節外転による荷重対応を行うことで膝関節へ生じる内反モーメントを低減するための荷重対応を図っていることが示唆された.【理学療法学研究としての意義】 膝OAの理学療法として,大腿直筋の活動を抑制し単脚支持移行期において,股関節内転に伴う荷重対応を促すアプローチが必要であることが示唆された.今後は追跡調査を行い,重症度別の運動学的要因の検討を行っていく必要がある.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2012 (0), 48101814-48101814, 2013

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205575461632
  • NII論文ID
    130004585955
  • DOI
    10.14900/cjpt.2012.0.48101814.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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