片脚着地動作時における膝関節外反に与える因子の検討

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  • ~筋力・可動域を中心に~

抄録

【はじめに】膝前十字靱帯(以下ACL)損傷は,スポーツ外傷の中でも発生頻度が高く,受傷すると高いレベルでのスポーツ活動が困難となる.また,術後競技復帰までに6ヵ月以上の期間を要し,選手の受ける損失は大きい.ACL損傷に影響する因子として,生体力学的因子が注目されている.中でも非接触型ACL損傷は,ジャンプ着地動作やカッティング動作中の膝関節外反の増加,外反モーメントの増加,膝軽度屈曲位が影響すると報告され,中でも、膝最大外反角度が注目されている.しかし,着地動作における膝最大外反角度と基本的な身体能力を示すパラメーターである関節可動域,筋力,着地時の膝アライメントや運動力学的なパラメーターである着地時の膝への負担,衝撃力との関係は明らかになっていない.そこで,これらのパラメーターの変化が膝外反角度の増減に影響を与えているかを,三次元動作解析装置,床反力計を用い,台から片脚着地動作を行った際に起こる膝最大外反角度と関節可動域,筋力,着地後最大下肢三関節角度,最大下肢三関節モーメント,最大鉛直方向床反力,つま先接地時(以下IC)での各関節角度,関節モーメントの間に関連があるかを検証することを目的とした.【方法】対象は,大学女子バスケットボール部所属選手、14名28肢(18~20歳:平均年齢18.2±0.6歳).測定項目は,関節可動域測定(伸展位股関節内旋・外旋角度)(屈曲位股関節内旋・外旋角度)(膝伸展位/屈曲位/荷重下・足関節背屈角度).下肢筋力測定:等速性筋力測定機を用い実施(膝伸展・屈曲・片脚スクワット・両足スクワット).等尺性筋力測定を、徒手筋力測定器を用い実施(股関節外転、外旋、開排).片脚着地動作は三次元動作解析システムVICONMXを用い,試技は20cm台からの片脚着地動作を左右とも実施し,解析可能だった2試技の平均値を採用した.解析項目は,つま先接地時と着地後最大を示した値の股・膝・足関節の各角度と関節モーメントと垂直方向最大床反力を算出した.統計は,片脚着地後,膝最大外反角度を中心に,各可動域,各筋力,各関節モーメント,最大床反力との相関をpearsonの相関係数を用い,有機性は危険率5%水準で判定した.【倫理的配慮】 本研究は、対象者に書面と口頭にて研究目的・方法を説明し同意を得た.また本研究はヘルシンキ潜原に基づく倫理的配慮を十分に行った.【結果】IC膝外反角と膝最大外反角度に有意な相関を認めた(p<0.05).しかし,それ以外の膝最大外反角度と関節可動域,各筋力,各関節における最大関節モーメント,床反力,IC時股関節・膝関節(膝外反を除く)・足関節の角度,IC時の各関節における関節モーメントの間に有意な相関は認めなかった.IC膝内外反角度は内反,外反,双方が存在していたが,最大膝内外反角度は全て外反位であった.【考察】IC膝外反角と膝最大外反角度のみに有意な相関を認め,片脚での着地動作において,着地の瞬間には膝関節内反位,外反位をとるものがいた.しかし,全ての被験者が最大外反に向かって膝を外反させている事が分かった.そして,IC時にすでに外反が大きいものは,最大外反も大きくなる事が示唆された.着地動作では,矢状面上での緩衝作用を前額面等で代償する可能性があり,着地時の靭帯保護作用として,神経筋コントロールによる早い反応と,それを補う前活動が必要と考えられる.そのため,IC膝外反は着地後に起こる身体活動をスムースに行うための前活動であるとも考えられる.よって,ICの膝外反角が,その人の着地パターンを決定付けている可能性が考えられた.また,股関節外転機能と膝外反量の関係について,股関節外転筋力や外旋筋力が低値な選手ほど膝外反角度量は大きいと報告しているものがあるが,今回の研究では膝最大外反角度と関節可動域、筋力との間に有意な相関は認められず,着地後の最大外反に対して股関節外転筋や外旋筋のみが影響を与えているのではなく複合的な要素が影響している事が本研究により示唆された.【理学療法学研究としての意義】 片脚着地動作時の膝最大外反角度は,IC膝外反が大きいものは膝最大外反角度も大きくなることが示唆され,また,膝関節最大外反角度は股関節、足関節の関節可動域や股関節周囲筋力、膝周囲筋力といった特定の要素で決定するものではない事が示唆された.今後の課題として,着地時膝最大外反を少なくするためには,ICまたは,それ以前のアライメントや筋のプレ活動などを分析する必要があると思われた.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2012 (0), 48101971-48101971, 2013

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205576048896
  • NII論文ID
    130004586071
  • DOI
    10.14900/cjpt.2012.0.48101971.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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