生物学的製剤導入前の関節リウマチ患者における医科的機能評価と身体機能評価・ADL評価の検討(第2報)

DOI
  • 藤原 貴子
    医療法人和香会 倉敷スイートホスピタル リハビリテーションセンター
  • 藤田 慎一朗
    医療法人和香会 倉敷スイートホスピタル リハビリテーションセンター
  • 楢原 伸二
    医療法人和香会 倉敷スイートホスピタル リハビリテーションセンター
  • 吉田 智弘
    医療法人和香会 倉敷スイートホスピタル リハビリテーションセンター
  • 山本 渉
    医療法人和香会 倉敷スイートホスピタル 診療情報管理室
  • 棗田 将光
    医療法人和香会 倉敷スイートホスピタル 内科
  • 松木 道裕
    医療法人和香会 倉敷スイートホスピタル 内科
  • 江澤 香代
    医療法人和香会 倉敷スイートホスピタル 内科
  • 江澤 和彦
    医療法人和香会 倉敷スイートホスピタル 内科
  • 那須 義久
    医療法人和香会 倉敷スイートホスピタル 整形外科

抄録

【はじめに】現在、生物学的製剤(以下、Bio)の登場により疾患のタイトコントロールが可能となった今、関節リウマチ(以下、RA)の治療は大きなパラダイムシフトが起こっていることは周知の事実である。当院の患者においてもBioの臨床効果判定は医師が行う評価(医科的機能評価)としてDisease Activity Score28- Erythrocyte Sedimentation Rate(以下、DAS28-ESR)やModified Health Assessment Questionaire(以下、mHAQ)等が実施され、Bio導入患者の疾患活動性や生活機能の把握をしている。しかしながら臨床の現場において、それらの臨床効果判定に用いられる医科的機能評価に対し、各身体機能評価・ADL評価間に乖離が生じている事がしばしば見受けられる。そこで今回、Bio導入時における医科的評価および身体機能評価・ADL評価間の相関の有無を検証した。【方法】対象はBio導入前のRA症例で、平成23年4月から平成24年8月までの間に、当院において各医科的評価に加え身体機能評価・ADL評価が可能であった60例(男性:15名、女性45名、平均年齢66.4±9.7(41-81)、平均罹病期間12.7±10.8年(0.2-38)、SteinbrockerのStageはStage1:7名、Stage2:24名、Stage3:6名、Stage4:23名に対し、医科的評価(DAS28-ESR値、mHAQ値)と身体機能評価(10m歩行速度、Functional reach test(以下、FR)、Timed up and go test(以下、TUG)、Disability of arm, shoulder and hand(以下、DASH)、ADL評価( Functional independence measure (以下、FIM))を行い、それぞれの相関を統計学的に比較検討した。相関にはSpearmanの順位相関係数を用い有意水準を5%未満とした。【説明と同意】本研究は、当院倫理委員会の承認を得てヘルシンキ宣言に基づいて実施された。【結果】一般的に強い相関が認められると言われているDAS28-ESRとmHAQとの間には、強くはないが相関が認められた(rs=0.490、p<0.001)。同様にDAS28-ESRと各身体機能評価間において、DAS28-ESRと10m歩行速度(rs=0.179、p=0.119)・FR(rs=-0.332、p=0.004)・TUG(rs=0.212、p=0.064)・DASH(rs=0.390、p<0.001)に加えFIM(rs=-0.185、p=0.108)と相関を認めないか、弱い相関しか認められなかった。一方、mHAQと各身体機能評価間において、10m歩行速度(rs=0.418、p<0.001)・FR(rs=-0.303、p<0.001)・TUG(rs=0.486、p<0.001)に加えFIM(rs=-0.497、p<0.001)との間にも有意な相関があり、特に上肢機能評価であるDASHとの間にはrs=0.651、p<0.001とほかの身体機能評価に比べやや強い相関が認められた。また、FIMと身体機能評価間では、10m歩行速度とはrs=-0.701、p<0.001、TUGとはrs=-0.707、p<0.001と立ち上がりから歩行能力に対して比較的強い相関がみられた。【考察】結果からDAS28-ESRとmHAQやその他の身体機能評価・ADL評価との間に乖離が見られたことについて、不可逆的な関節破壊が進行した症例を含む症例群では、疾患活動性は身体機能・ADL能力に必ずしも反映しない事があると考えられる。また、mHAQと身体機能評価・ADL評価の間には有意な相関を認め、特にDASHとの間に強い相関を認めた事に関しては、すでに完成された機能障害、特に上肢機能障害がmHAQに強く影響しているということを示唆され、それに対してFIMは下肢、特に立ち上がりや歩行に関して強く影響していることが考えられる。【理学療法学研究としての意義】関節リウマチ治療は、近年の薬物療法の進化、特にBioの登場により大きくパラダイムシフトしている。今回の研究は、Bio使用症例に対して詳細な身体機能評価を実施し、同薬剤導入中の関節リウマチ患者に対するリハビリテーションの具体的な治療戦略を探る為に有用であると考えられる。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2012 (0), 48101979-48101979, 2013

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205576054528
  • NII論文ID
    130004586076
  • DOI
    10.14900/cjpt.2012.0.48101979.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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