口蓋裂術後の異常構音の経年的観察-鼻咽腔閉鎖機能良好例について-

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  • A Longitudinal Study of Misarticulations in Postoperative Cleft Palate Children with Adequate Velopharyngeal Function

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抄録

早期手術後に良好な鼻咽腔閉鎖機能を獲得した口蓋裂術後症例にみられる種々の構音障害の発現時期および経時的変化を明らかにするために,1977年から1985年までの問に昭和大学第一口腔外科および関連病院において口蓋形成術(粘膜骨膜弁法による口蓋後方移動術)を受け,良好な鼻咽腔閉鎖機能が得られた31例(両側性唇顎口蓋裂5例,片側性唇顎口蓋裂17例,口蓋裂9例)の構音の変化について経年的観察を行ったところ,以下のような結果が得られた。<BR>1)異常構音は18例(58%)に認められたが,そのなかでは口蓋化構音が最も多く,ついで声門破裂音,鼻咽腔構音,側音化構音の順であり,咽頭摩擦音,咽頭破裂音は1例も認められなかった。<BR>2)異常構音が自然治癒した症例は18例中5例(28%)であり,異常構音延べ27例中でみると自然治癒9例,改善8例,他の異常構音への移行例3例,不変7例であった。自然治癒は声門破裂音が最も多く認められ,ついで鼻咽腔構音,口蓋化構音の順であり,側音化構音には認められなかった。<BR>3)自然治癒の時期は異常構音の種類によって異なり,声門破裂音および鼻咽腔構音の単独例では3歳から3歳半の鼻咽腔閉鎖機能の獲得時期と一致し,口蓋化構音症例および口蓋化構音を合併した鼻咽腔構音症例では4歳半から5歳半の間に認められた。<BR>4)口蓋化構音の自然治癒および改善の経過には構音発達の過程において早期に獲得される音から,しかも音節レベルから段階的に治癒していくものと,全ての音の構音点が舌運動の習癖の変化に伴い舌背から徐々に舌尖に移行して同時に改善するものとが認められた。前者では口蓋化構音のDPパターンは硬口蓋後縁にのみ接触する型であり,後者では厚い接触であった。

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