口蓋粘膜骨膜欠損創の治癒過程に関する組織学的研究

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  • A Histological Study on Healing Process of Palatal Wound with Bone Denudation

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抄録

本研究は,骨の露出を伴う口蓋粘膜骨膜欠損創の治癒過程を観察し,口蓋形成術後に生じる上顎骨の発育抑制の機序を解明することを目的とした。<BR>4週齢の雄性ラット32匹に対し,硬口蓋部半側の粘膜骨膜を切除し,粘膜骨膜欠損創を形成した。術後2週から12週まで一定の間隔で,口蓋の創面を光学顕微鏡ならびに走査電子顕微鏡を用いて,術創の治癒過程を組織学的に観察し,非手術側と比較した。<BR>その結果,口蓋粘膜欠損創の治癒過程は以下の4期に分けられた。<BR>第1期は,細いコラーゲン線維と細網線維が増殖し,それらが疎らな線維網を形成して凹凸不整な硬口蓋骨面と結合していた。骨組織は骨芽細胞により急速に修復された。第2期は,Sharpey線維による骨と結合組織の緊密な結合の形成によって特徴づけられ,骨および結合組織の修復は持続していた。第3期では,Sharpey線維が骨に埋入され骨と結合組織の結合はより強固になった。第4期では,緻密なコラーゲン線維が骨面に密着していたが,Sharpey稗維は骨と結合組織の境界部に残存し両者を結合していた。<BR>この研究結果から,口蓋粘膜骨膜欠損創に形成される癩痕組織中のSharpey線維が,硬口蓋骨と強固に結合されることによって,上顎骨の発育が抑制されるものと推察された。すなわち,pushback法による口蓋形成術の際に生じる口蓋粘膜骨膜欠損創が,上顎骨発育抑制の要因であることが示唆された。

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