胎仔レーザー手術を応用した顎顔面形態異常動物モデルの作成

  • 廣瀬 健
    榎本クリニック・矯正歯科
  • 鈴木 聖一
    東京医科歯科大学大学院歯学総合研究科顎顔面頸部機能再建学系顎顔面機能修復学講座顎顔面矯正学分野
  • 大山 紀美栄
    東京医科歯科大学大学院歯学総合研究科顎顔面頸部機能再建学系顎顔面機能修復学講座顎顔面矯正学分野

書誌事項

タイトル別名
  • An Animal Model of Maxillofacial Malformation Produced by Fetal Laser Surgery

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抄録

先天性疾患により顎顔面に形態異常を発現する患者の顎顔面の成長発育は,正常なものとは異なる様相をたどると考えられ,その機構や顎整形力に対する応答性などについての基礎的研究を行うためには,顎顔面頭蓋に形態異常を発現する実験動物モデルが必要となる.このうち,遺伝子操作や母獣に催奇形物質を投与して作製した奇形発症動物は,他の致命的な内臓奇形を合併するため出生直後に死亡し,生後の成長観察が不可能となる場合が多い.本研究の目的は,胎仔外科の手法を用いて出生時において顎顔面領域に形態異常を発現し, .かつ,出生後も育成可能な実験動物モデルを作成する新しい方法を開発することにある.<BR>妊娠14日目のICRマウス母獣をネンブタール麻酔下にて開腹し,子宮に切開を入れ胎仔を羊膜に包まれた状態で子宮より露出させた.次に眼科用アルゴンレーザー光線をマウス胎仔の鼻口唇部に照射して小さな傷を作成した.その際,アルゴンレーザー光線は透明な羊膜を透過するため羊水の漏出はなかった.レーザー照射終了後マウス胎仔を母獣の腹腔内に戻して腹壁を縫合し,子宮外妊娠の形で妊娠が継続された.これら胎仔手術をうけたマウス胎仔は妊娠18日目に帝王切開にて誕生し,同日出産した雌マウスを養母として育てられた.胎仔手術を受けたマウス胎仔の54.6%が誕生時に生存し,生存した新生仔の55.4%の鼻口唇部に形態的非対象が認められた.これらの新生仔マウスは生後3ケ月以上育成され,全身の成長とともに鼻口唇部においてレーザー照射側と非照射側の形態的相違がさらに明瞭になった.これらの結果により,アルゴンレーザーを用いた胎仔外科の手法が顎顔面領域に奇形を発現する実験動物モデルの作成に有用であることが明らかとなった.

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参考文献 (25)*注記

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