利根川流域を対象とした流域規模での可能最大降水量(PMP)の推定に関する研究

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タイトル別名
  • Study of Estimation on Probable Maximum Precipitation for Tone River Basin

抄録

本研究は,河川計画においても津波対策におけるL2レベルに相当する外力を可能最大降水量と捉え,既往算定手法の問題点を指摘し,日本の河川流域において適切な評価等を考慮した可能最大降水量の算定を,湿度の最大化の精度向上と日本の河川流域の地形条件,洪水要因を考慮した降雨の最大化を試みたものである.<br> 湿度の最大化による可能最大降水量の算定は,豪雨時の可降水量と過去に発生した湿度最大となる時点の湿度の最大化雨量との比率を掛け合わせるという,WMOの基本的な考え方を用い,豪雨の発生時間内のメソ客観解析データの各気層の比湿を鉛直積分して求め,下層は湿潤であっても中層が乾燥しているなどの分布を評価した. <br> 可降水量と湿度の最大値は,降雨継続時間毎に湿度の最大化率を求めた.湿度の最大化に用いた気象官署は,豪雨時の風向を交流して水分の流入方向として,基準地点八斗島上流域に北東から流入する風向がどの豪雨でも最大雨量時には卓越しているため,前橋と宇都宮観測所の平均値の最大値を用いた. 以上の方法により算定した可能最大降水量は,実績雨量の概ね1.7~2.3倍,最大3.7倍の雨量となった.利根川流域において既往最大3日雨量であるカスリン台風の318mmに対して,湿度の最大化のみで3降雨が318mm以上となり,最大1.37倍の434mmの雨量が発生しうる結果となった.これは,従来のWMOによる方法が本研究のメソ客観解析データを用いて各気層の比湿を用いた場合に比べて過大となっているためであり,湿度の最大化を考慮した降雨増加率は小さめに算定される傾向にある.このため,従来のWMOの方法は可能最大降水量としては小さめに算定される傾向にあり,本研究で用いた可降水量の実態を精度良く把握する手法が有効であると評価した. <br> 利根川八斗島上流域において,台風時の流域平均雨量に影響を及ぼすと考えられる要因について相関分析を行い,基準地点(八斗島)からの距離,中心気圧,風速などを主要因であると把握した.この結果から,基準点からの距離が大きく,必ずしも流域平均雨量としては上位となっていない台風について,これまでに流域に最も近づいた台風経路で移動した場合には,雨量が増加することが推定され,このような実績雨量の最大化も踏まえて可能最大降水量の算定を行う必要があることを示した.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205712564992
  • NII論文ID
    130004628460
  • DOI
    10.11520/jshwr.25.0.48.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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