当院において血液培養で検出されたコアグラーゼ陰性ブドウ球菌についての検討

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タイトル別名
  • Clinical Consideration of Coagulase Negative <i>Staphylococci </i>Isolated in Blood Culture

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抄録

適切な感染症診療を行う上で血液培養は非常に有用な検査であるが,本邦における血液培養件数は諸外国と比較し非常に少なく,複数セット採血実施率が低いことが問題とされている.当院では 2007 年 6 月に Infection Control Team(以下 ICT)を設立し,血液培養 2 セット以上の採血の推奨,ICT ラウンドなどを通じ血液培養陽性例への診療介入を行っている.<BR>  Coagulase negative Staphylococci (CNS) は血液培養から検出される頻度が多く,臨床的意義の判定が困難なことが多い.2007 年 8 月~2008 年 7 月(I 期),2008 年 8 月~2009 年 7 月(II 期),2009 年 8 月~2010年 2 月(III 期)を対象期間とし,ICT の継続的な介入が,血液培養の提出件数,複数セット提出率,血液培養陽性 CNS の治療判断に対してどのような影響を及ぼしたかについて後方視的に検討を行った.感染,感染疑い例と判定した例について,①無治療,②感受性判明後にも感受性を有さない抗菌薬が継続使用されている,③感受性不明だが一般的にグラム陽性球菌によるCRBSI を想定した場合に使用されない抗菌薬が使用されている例を不適切と定義し,血液培養結果を受け,担当医がどのように解釈し治療を行っているかについても評価を試みた.血液培養提出件数は I 期からIII 期にかけて月平均 11.3 件増加し,複数セット採血が行われた頻度は I 期平均 67%,II 期 79%,III 期 89% と各期間を通じ有意に増加傾向を示し(p<0.001),これに伴い判定不能例が I 期 27% からIII 期 6% へと有意に減少した(p=0.017).感染,感染疑い例では,中心静脈カテーテル挿入歴を有する例が 92%(45/49)と大多数を占めていた.不適切と判定した例は I 期85%(11/13),II 期 56%(14/25),III 期 45%(5/11)と,I 期からIII 期にかけて有意に減少を認めた(p=0.043).ICT による継続的な介入により,血液培養提出件数および複数セット提出率の上昇と判定不能例が減少し,適切な治療判断が行われているケースの増加につながったと考えられた.引き続き ICT の活動を通じて感染症診療の質の向上を推進していく必要があると考えられた.

収録刊行物

  • 感染症学雑誌

    感染症学雑誌 86 (1), 1-6, 2012

    一般社団法人 日本感染症学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (4)*注記

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