薬液を応用したNiTiファイル破折片の除去に関する基礎的研究

DOI
  • 鈴木 瑛子
    明海大学歯学部機能保存回復学講座歯内療法学分野

書誌事項

タイトル別名
  • A Basic Study on the Removal of NiTi Rotary File Fragments with Chemical Solutions
  • —Effects of Solution Temperature and Immersion Method on Fragment Corrosion—
  • —薬液温度および浸漬方法が腐食に及ぼす影響—

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抄録

 目的 : NiTiファイルは, 超弾性という機械的特性により, 根管形成における有効性が報告されているが, 根管内での破折が問題とされている. しかし, 除去に関する報告は少なく, 根管内で破折したNiTiファイルの除去方法が確立されているとはいいがたい. これまで, 薬液の応用でNiTiファイル破折片を腐食させて除去を容易にする方法を確立することを目的とし, 薬液の応用によりNiTiファイル破折片を腐食させる基礎的研究を行ってきた. 本研究では, 2種類の薬液によるNiTiファイル破折片の腐食メカニズムについて分析し, さらなる腐食溶解時間の短縮を目的として, 薬液温度の変化, 浸漬方法, および2種類の薬液の相互作用が腐食溶解にどのような影響を及ぼすかについて検討した.<br> 材料と方法 : NiTiロータリーファイルとして, ProTaper (Dentsply Maillefer, Switzerland) #25, F2を使用した. 浸漬薬液には, pH4.5に調製したリン酸酸性2% (w/v) フッ化ナトリウム溶液 (以下, APF), 10% (w/v) 次亜塩素酸ナトリウム-19% (w/v) 塩化ナトリウム溶液 (以下, NCN), およびコントロールとして脱イオン水を使用した. 腐食状態についての分析は, X線マイクロアナライザーによるSEI撮影, 元素マッピング, および定性定量分析により行った. 薬液の腐食溶解に及ぼす影響については, 1) 薬液温度の影響, 2) 薬液への浸漬方法の影響, 3) 2種類の薬液の相互作用の影響についてそれぞれ検討した. 腐食溶解の評価は, 浸漬前と浸漬3時間後の重量変化の測定から算出した. さらに形態学的変化について観察を行った.<br> 成績 : 元素分析の結果, APFではTiの溶出が, NCNではNiの溶出が多くみられ, 腐食メカニズムが異なることが示された. 腐食溶解に及ぼす影響は, 薬液温度の上昇に伴い腐食は促進した. 間歇的な薬液への浸漬方法は, 連続的に浸漬するよりも腐食は促進した. 薬液の相互作用では, APFに浸漬後NCNに浸漬させた場合に最も腐食溶解が促進した.<br> 結論 : APFとNCNでは, 腐食状態が異なることが確認された. また, 薬液温度の上昇, 薬液への間歇的な浸漬あるいは2種類の薬液を相互に作用させることは, NiTiファイル破折片の腐食溶解を促進させる可能性があることが示された.

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