慢性閉塞性呼吸器疾患の男性患者に発症したアルコール依存関連鉄芽球性貧血の1例

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タイトル別名
  • Alcoholism-associated sideroblastic anemia that developed in a man with chronic obstructive pulmonary disease

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抄録

 症例は69歳の男性. かねてより慢性閉塞性呼吸器疾患のため治療を受けていたところ, 小球性・低色素性貧血を認めたため紹介を受けた. 血液検査では, ヘモグロビン値7.6 g/dL, 平均赤血球容積70 fL, 平均赤血球血色素量21.1 pg, 平均赤血球血色素濃度30.3%であった. 血清鉄233 μg/dL, 総鉄結合能265 μg/dL, トランスフェリン飽和度87.9%, フェリチン552 ng/mLと鉄過剰状態が明らかであった. 骨髄の細胞密度は60ないし70%で, 坦鉄赤血球が赤血球の7%, 環状鉄芽球が赤芽球の45%を占めた. これらの結果は鉄芽球性貧血の診断基準を満たした. 患者は, 5年以上にわたって4リットルペットボトル入り焼酎を2-3日で飲んでいたが, 呼吸困難の増悪ため飲酒が最早不可能となっていた. 来院当初は貧血が進行し輸血を必要としたが, その後, ヘモグロビンレベルは順調に上昇した. 8か月後のヘモグロビン値は14.6 g/dLで, 赤血球恒数も正常値に復した. 当初は環状鉄芽球を顕著に認める骨髄異形成症候群の亜型と診断したが, 臨床経過から, 本症例はアルコール依存に起因する獲得性・可逆性の鉄芽球性貧血と考えられた. 環状鉄芽球を伴う骨髄異形成症候群の診断に際しては, 非腫瘍性の疾患を注意深く除外する必要がある.

収録刊行物

  • Tenri Medical Bulletin

    Tenri Medical Bulletin 16 (1), 25-30, 2013

    公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所

参考文献 (9)*注記

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