ニュートリゲノミクスによる食品の機能性・安全性の解析
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- 加藤 久典
- 東京大学総括プロジェクト機構 総括寄付講座「食と生命」
書誌事項
- タイトル別名
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- Analysis of the functionality and safety of foods by nutrigenomics
抄録
ニュートリゲノミクスは,食品や食品中の成分,食事内容,食習慣など,「食」に関連する様々な要因が生体に及ぼす影響をオミクスにより解明することを目的とする。食品は,栄養,嗜好,生体調節といった多面的な機能を介して,生命を維持し,健康を支え,生活に潤いを与える。栄養素の摂取においては,不足と過剰の両面のリスクを考慮する必要がある。また,栄養素以外の食品中の機能性成分に関しても,効果が期待できる摂取量に対して過剰摂取の影響も問題となる。<br>演者らのニュートリゲノミクス研究の試みのうち,本日は主に以下の2つの取り組みについて紹介する。まず特定の食品の機能性研究の例として,コーヒー摂取の抗肥満・抗糖尿病作用を取り上げる。こうしたコーヒーの効果は疫学的な研究から既に示されている。その背景にある分子メカニズムに迫る目的で,高脂肪食摂取マウスにおいて,トランスクリプトミクス,プロテオミクス,メタボロミクスを組み合わせて統合的な解析を行った。それぞれのオミクスの特徴を活かして,包括的情報を得ることができた。一方,食の安全に関わるトピックとして,単一アミノ酸の過剰摂取の影響についての検討例を共有させていただきたい。アミノ酸は比較的過剰に摂取しても生体にとって影響は小さいが,ひとつのアミノ酸だけを大量に摂取すると,特にタンパク質の摂取量が低めの場合に成長阻害等の悪影響が生じる。ロイシンを過剰量摂取させたラットにおいて,肝臓や血液のトランスクリプトミクス,メタボロミクスから,毒性のマーカーとなる遺伝子や代謝物の検索,上限摂取量に関する情報の取得などを試みた。<br>通常,食品や食品由来の成分などが生体に及ぼす作用は,穏やかなものである場合が多い。従って,効果の検出が困難であったり,ごくわずかな実験条件の違いにより得られる結果が左右されやすかったりする。それに対する工夫など含めて紹介したい。
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 40.1 (0), 1074-, 2013
日本毒性学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205545445760
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- NII論文ID
- 130004676582
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可