カニクイザルの心血管系試験に抗侵害刺激効果(鎮痛効果)の観察を組み込むための基礎検討

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  • Fundamental investigation to include observations of antinociceptive (analgesic) effects in a cardiovascular study in cynomolgus monkeys

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抄録

目的:テレメトリー試験に心血管系以外の評価を組み込む試みの一環として,カニクイザルを用いて,テレメトリー試験に抗侵害刺激効果(鎮痛効果)の観察を組み込む方法を検討した.方法:テレメトリー送信器埋込済みの雄性カニクイザルを用いて,心電図及び血圧の各パラメータをテレメトリーシステムで自動記録した.その間,経時的に抗侵害刺激効果の観察を行った.抗侵害刺激効果の観察は,除毛した尾先端部に熱刺激発生装置で収束光による48℃の熱与え,尾を動かすまでの潜時を測定した(Tail withdrawal法).カットオフタイムは20秒とした.各測定ポイントでは,1分以上の間隔で潜時を3回測定し,投与前に対する投与後の最大効果%MPE(Maximal possible effect)={(測定値−Pre値)/(20−Pre値)}×100を算出した.また,潜時測定時には鎮静状態の有無を観察した.動物の尾をケージ外に引き出して潜時測定操作への馴化を5日間行った後,媒体又はモルヒネを皮下投与し,投与前,投与後3及び6時間に心血管系パラメータ及び抗侵害刺激効果を同時に評価した.結果:通常,潜時測定時には動物をモンキーチェアーに保定するが,馴化により,動物をケージ外に出すことなく潜時を測定することが可能となった.モルヒネ8 mg/kgの皮下投与により,潜時の延長(%MPE値の増加),鎮静状態(動作緩慢,観察者への反応の低下)及び血圧低下作用が検出された.媒体投与では,血圧及び心拍数が潜時測定中に一過性に上昇したが,測定終了後は直ちに回復した.考察:テレメトリーに及ぼす潜時測定の影響は一過性であり,また,モルヒネの抗侵害刺激効果,鎮静効果及び血圧低下効果が捉えられたことから,潜時測定の馴化により,カニクイザルの心血管系試験に抗侵害刺激効果の観察を組み込むことは可能であることが示唆された.

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