有機スズ誘導性小胞体ストレスとそのメカニズム解明

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タイトル別名
  • Organotin-induced endoplasmic reticulum stress and its mechanism

抄録

【目的】トリブチルスズ (TBT) はかつて船底塗料等に用いられており水生生物に対する生殖毒性,その他,免疫毒性や神経毒性などが報告されている。小胞体 (ER) はタンパク質合成やその折りたたみに関与する他,細胞内のCa2+貯蔵庫としても機能する細胞内小器官である。ER内においてCa2+恒常性のかく乱やタンパク質への糖鎖付加阻害など様々な要因によって,ER内に折りたたみ不全タンパク質が蓄積すると細胞はそれを感知しERストレス応答を惹起することが報告されている。そこで本研究では,これまで明らかとされていないTBTによるERストレス誘導とそのメカニズムについて検討をおこなった。【方法】実験ではヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞を用いた。ERストレス関連タンパク質についてはWestern blottingにより調べた。また,細胞生存率についてはWST-1法により評価した。細胞内Ca2+濃度に関しては,Ca2+蛍光指示薬であるfura-2 AMを細胞に30分導入し,阻害剤前処理を行なった後,TBT刺激による340 nm/380 nmの蛍光強度比の変化を画像解析装置ARGUS-100/HisCAを用いて評価した。【結果および考察】100-700 nM TBTによりERストレス関連タンパク質であるGRP78の発現は濃度依存的に増加した。また,アポトーシス関連タンパク質であるCHOPの発現変動も濃度依存的に増加し,細胞生存率については濃度依存的に減少した。一方,TBTは細胞内Ca2+濃度を上昇させるという報告があるため,TBTのER内Ca2恒常性に対する影響,及びそのメカニズムの検討を行った。その結果,ER膜上に存在しCa2+をER内から細胞質へ放出するリアノジン受容体の阻害剤であるダントロレン前処理により,TBT刺激による細胞内Ca2+濃度上昇が有意に抑制された。さらにダントロレン前処理によりTBT誘導性のERストレスマーカーの発現が抑制され,細胞生存率は有意な回復がみられた。以上の結果より,TBTはER内からリアノジン受容体を介してCa2+を放出させ,ER内のCa2+恒常性をかく乱することで,ERストレスを惹起し細胞死に至ることが示唆された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680522000640
  • NII論文ID
    130004676744
  • DOI
    10.14869/toxpt.40.1.0.2003151.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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