p53R2遺伝子発現に基づくヒト細胞遺伝毒性試験 (NESMAGET,第15報) ヒトリンパ芽球細胞TK6安定発現細胞株の樹立と反応性検討

DOI
  • 大野 克利
    日清食品ホールディングス(株) 食品安全研究所
  • 溝田 泰生
    日清食品ホールディングス(株) 食品安全研究所
  • 山田 敏広
    日清食品ホールディングス(株) 食品安全研究所

書誌事項

タイトル別名
  • A genotoxicity test system based on p53R2 gene expression in human cells. (NESMAGET Part15): Establishment of stable TK6 cell line expressing p53R2-dependent reporter gene

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抄録

【目的】化学物質の発がん性リスク評価において,遺伝毒性試験の情報は重要である。従来の遺伝毒性試験法に比べ,操作性に優れるだけでなく,ヒトへの外挿性に優れ,偽陽性の少ない遺伝毒性試験法の開発を目的とし,DNA損傷時p53により発現調節されるDNA修復遺伝子p53R2の発現に基づくヒト細胞を用いた遺伝毒性試験法(NESMAGET®)を構築し,900種類以上の化学物質を評価してきた。特長として,様々なDNA損傷様式を検出でき,必要検体量が少ないなどが挙げられ,創薬毒性研究における遺伝毒性スクリーニングに有用であることを示してきた。今回,従来使用してきたヒト乳がん細胞MCF-7に加え,IWGTやICHガイドラインにて遺伝毒性試験への利用が推奨されるヒトリンパ芽球TK6細胞を本試験法へ適用し,p53R2依存的レポータージーンを組み込んだ安定発現株TK6/p53BS-luc2P/Rluc細胞を樹立し,その性能評価として,作用機序の異なるDNAに作用する化学物質数種類を用いてその反応性を検討したので報告する。<br>【方法】TK6/p53BS-luc2P/Rluc細胞を96穴プレートに播種し,被験物質添加6時間後のルシフェラーゼ活性を測定することにより,被検物質の遺伝毒性を判定した。<br>【結果と考察】TK6/p53BS-luc2P/Rlucを用いた本試験法は,陽性対照adriamycinに対し,MCF-7に比べ最大活性は低いものの,ばらつきの少ない安定したルシフェラーゼ活性増加を示した。また,様々なDNAに作用する化学物質を用いた検討では,既存遺伝毒性試験の陽性対照として使用されるアルキル化剤だけでなく,DNA鎖切断を引き起こす化学物質や遺伝毒性のある代謝拮抗剤などに陽性反応を示した。一方,染色体に間接的に作用する微小管作用薬に対しては,反応しなかった。以上よりTK6/p53BS-luc2P/Rlucを用いたNESMAGET®は,従来のMCF-7を用いた試験法と反応強度は異なるものの,化学物質の様々な遺伝毒性を検出でき,試験期間がより短く簡便な試験法として,化学物質の遺伝毒性評価に有用であることが示唆された。

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