ダイオキシンが引き起こす水腎症~曝露から発症までのパスウェイ~

DOI
  • 吉岡 亘
    東京薬科大学 薬学部 病態生理学教室
  • 川口 達也
    東京大学医学系研究科 疾患生命工学センター 健康環境医工学部門
  • 相田 圭子
    東京大学医学系研究科 疾患生命工学センター 健康環境医工学部門
  • 藤澤 希望
    東京大学医学系研究科 疾患生命工学センター 健康環境医工学部門
  • 島田 晃成
    東京薬科大学 生命科学部 環境ストレス生理学研究室
  • 遠山 千春
    東京大学医学系研究科 疾患生命工学センター 健康環境医工学部門

書誌事項

タイトル別名
  • Dioxin-induced neonatal hydronephrosis —the pathway from exposure to onset—

抄録

【背景】2, 3, 7, 8-四塩素化ジベンゾ-p-ダイオキシン(TCDD)曝露は囓歯類に水腎症を引き起こす。水腎症は尿排出障害を原因としてヒトにおいても生じる疾患であり,重症例では腎機能消失に至る。授乳期TCDD曝露による水腎症は尿路の物理的閉塞を伴わないことから,何らかの機能の異常が原因と考えられた。そのような機能として尿管蠕動運動と尿濃縮を想定し,TCDD曝露影響を検討した。また,曝露により増加するプロスタグランジンE2 (PGE2)の役割を検証した。<br> 【方法】出産後1日目のC57BL/6系統の母マウスにTCDDを経口投与することで産仔に経母乳曝露した。尿管蠕動運動の指標として腎盂収縮頻度を,尿濃縮能の指標として膀胱中の尿重量と尿浸透圧を用いた。遺伝子発現はRT-qPCR法により,尿中PGE2はEIA法により定量した。各種遺伝子欠損マウス実験では,雌雄のヘテロ欠損型マウスを交配して得た野生型とホモ欠損型の産仔を比較した。尿量抑制実験では,抗利尿ホルモン誘導体dDAVPを新生仔に14日間腹腔内投与した。<br> 【結果と考察】新生仔の蠕動運動はTCDD曝露による変化がなく,尿量増加と尿浸透圧低下を見出した。曝露による尿量増加をdDAVPで抑制すると水腎症が抑制された。また,TCDD曝露は尿中PGE2レベル,ならびに腎におけるPGE2合成酵素(cyclooxygenase-2, microsomal prostaglandin E synthase-1 (mPGES-1), cPLA2α)の発現量を顕著に増加させた。これらの酵素の欠損または薬剤に因る活性阻害によりPGE2量と水腎症が抑制された。<br> 【結論】TCDDは,PGE2合成系を亢進させ尿濃縮メカニズムを撹乱することで水腎症を引き起こすことが判明した。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680521504256
  • NII論文ID
    130004676828
  • DOI
    10.14869/toxpt.40.1.0.3012.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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