紅皮症における血清LDH(乳酸脱水素酵素)活性の臨床的ならびに実験的研究

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  • [Clinical and experimental studies on serum LDH (lactate dehydrogenase) activity in erythroderma].

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抄録

全身に潮紅と鱗屑を来たす湿疹続発性紅皮症では血清LDH活性が上昇する.臨床例の検索,動物実験による検討を行い,血清LDH活性の上昇の機序ならびに臨床的意義を明らかにしようと試みた.紅皮症を来たした臨床例33例の血清LDH活性を調べ,湿疹続発性紅皮症について皮膚LDHの局在,皮膚LDH活性を検索した.動物実験として全身に潮紅を呈するGeneralized Rashをモルモットに作り,皮膚LDHの局在を調べ,血清,表皮,肝,肺ならびに脾のLDH活性を経時的に測定した.また1%DNCBによる接触皮膚炎をモルモットの背部に面積比をかえて2群作り,血清ならびに表皮のLDH活性を測定した.さらにGeneralized Rashモルモットについては表皮と血清のLDH分画も検索した.臨床例,動物実験ともに主としてLDHの局在は表皮にあったので,皮膚LDH活性の測定の対象を表皮に定めた.まず臨床例では病巣表皮のLDH活性は低下していた.次にGeneralized Rashモルモットでは,血清LDH活性は上昇し,表皮LDH活性は低下した.経時的変化を追うと逆相関関係を呈しながら回復していく所見を得た.肝,肺,脾のLDH活性は著変を呈さなかった.接触皮膚炎では病巣表皮LDH活性は低下するが,血清LDH活性の上昇には面積比が関与した.血清,表皮とも接触皮膚炎のLDH活性の変動はGeneralized Rashに比べて小さかった.Generalized RashではLDH分画を電気泳動で測定し,表皮LDH第Ⅴ分画の著減,血清LDH第Ⅴ分画の軽度上昇を認めた.以上の結果及び,臨床,動物実験ともに,病巣表皮LDH活性は低下,しかし他臓器のLDH活性に著変がないこと,動物実験で血清LDH活性が回復していくと,表皮LDH活性も回復すること等より,血清LDH活性の上昇は表皮由来と考えた.電気泳動でもこれを示唆する所見が得られた.臨床,動物実験から潮紅をおこす機序の違い,潮紅の占める面積比の差が血清LDH活性の上昇に関与するものと推測された.さらに血清LDH活性は肉眼的所見に先行して変動することが多いので,湿疹続発性紅皮症の病勢を判断する有力なマーカーとなることが示唆された.

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