実験的接触皮膚炎の研究

  • 手塚 正
    東京医科歯科大学医学部皮膚科学教室

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タイトル別名
  • ジッケンテキ セッショク ヒフエン ノ ケンキュウ

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抄録

接触過敏症は簡単な低分子量の化学物質を皮膚にぬつたり,皮内に注射することによつて成立し,その物質の極く少量を以つて局所皮膚に細胞性過敏症,すなわち遅発型アレルギー性炎症を生ずるものである.またこの接触アレルギーの原因となるものの殆んどは簡単な化学物質である.この現象を遅発型アレルギーとする理由は,1)薬剤(ハプテン)を塗布してから数時間は全く反応が現われず,24~48時間で最大と成ること.2)組織学的にみて炎症像はツベルクリン反応と同様であること.3)患者または感作動物の血清を正常人または動物に注射しても,被働性感作は成立しないがリンパ球により感作が成立すること.4)無γ-グロブリン血症の人は即時型アレルギーを起さないが,2,4-dinitrochlorbenzeneによる接触皮膚炎を起すこと,等によつてであるが感染アレルギーにおける場合と若干の差異があるとされている.このような接触過敏症を起す低分子量の化学物質は,2,4-dinitrochlorbenzene,picrylchloride,urushiol等多くのものが知られているが,その物質に特徴的なことはそれ自体では抗原性を有せず,蛋白質の遊離アミノ基や,SH基と共軛結合して不可逆的に結合することによつて複合抗原と成り抗原性を獲得することである.試験管内でこれらの化学物質,たとえば2,4-dinitrochlorbenzeneまたはpicrylchlorideを蛋白質に添加すると,容易に遊離アミノ基と結合することが知られている.1904年にNestler,1924年にLowは人間においてprimoseによる実験的接触皮膚炎感作に成功した.動物における同物質の実験的接触皮膚炎感作は,1926年にBlochとSteiner-Wourlichによつて成功が報告されている.その後,phenylhydrazine,arsphenamine,paraphenylendiamine,urushiol,poisonivyが,モルモつトに接触皮膚炎感作を起すことが証明された.人間においては,1935年にWedroff et Dolgoffが,1-chloro,2,4-dinitrochlorbenzeneを用いて実験的接触皮膚炎感作に成功して以来,同物質について,Sulzberger,Rostenberg,Haeberlin,Haxthausen,Ballestero,Mom,Polak et Mom,Hollstrom,Baerらが感作成功を報告している.接触皮膚炎を惹起することの出来る物質には植物性物質,化粧品,染料,石ケン,洗剤,衣類,金属,薬物及び工業用化学物質があり,その組成,化学構造も明らか

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