GMC細胞を利用したヘルペスウイルスの研究

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  • GMC サイボウ オ リヨウ シタ ヘルペスウイルス ノ ケンキュウ

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抄録

単純疱疹ウイルス(以下HSVと略す)によつて起る疾患としては,単鈍疱疹(口唇疱疹,熱性疱疹,陰部疱疹),ヘルペス性歯肉口内炎,ヘルペス性角結膜炎,カポシ痘瘡様発疹,脳脊髄膜炎,全身感染症がある.とくに単純庖疹は他のウイルス性疾患と異なり,発熱,太陽光線などへの露出,精神的ストレスなどの因子によつて再発をくりかえす点で特徴的な地位をしめているわけである.HSV研究の歴史は1919年Lowensteinが人のヘルペス性角膜炎および単純疱疹の水疱内容液を家兎の角膜に接種して,特有の変化をおこさせたことにはじまる.このHSVは自然宿主としての人のほか,マウス,家兎,モルモット,ラット,ハムスターなどに容易に感染をおこすほか,孵化鶏卵CAMできわめてよく発育する.組織培養細胞でも,株化した細胞(FL,HeLa,KB)にも,初代培養細胞(家兎腎細胞,猿腎細胞)にもよく増殖することが知られている.初代あるいは2代目の猿腎細胞はエンテロウイルスの分離にはかかすことの出来ない細胞であるが,猿固有のシミアンウイルスの汚染の危険性がつねに存在している.この不便さをのぞくために,1962年Hullらが赤毛猿(rhesus monkey)の腎細胞,Hoppsらがミドリ猿(grivet monkey)の腎細胞の株化に成功した.1964年SchmidtらはHoppsらが確立したアフリカミドリ猿腎継代細胞であるBS-C-1株は,エンテロウイルス,その他のウイルスにたいして高い感受性をしめし,初代培養細胞に十分かえうることを証明した.また,この細胞は他の人由来の細胞にくらべ,細胞が単一性で,無血清培地中でも,10日以上維持することが出来るという特性をもつている.そこで,われわれはこのミドリ猿腎臓由来のGMC細胞を利用して,口唇庖疹患者からウイルスを分離し,さらに分離しえた1株をもちいて,福岡県下正常人血清を対象として中和抗体の分布状態を検索した.また,標準株(HF株)を使用して,GMC細胞中の増殖の過程を増殖曲線と対比して,光学顕微鏡ならびに電子顕微鏡所見とにより観察したのでそれらの結果についてのべる.

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