黄色ブドウ球菌の病原性制御機構に関する研究

  • 垣内 力
    東京大学大学院薬学系研究科微生物薬品化学教室

書誌事項

タイトル別名
  • Studies on the regulatory mechanism of <i>Staphylococcus aureus</i> virulence
  • 平成26年小林六造賞受賞論文 黄色ブドウ球菌の病原性制御機構に関する研究
  • ヘイセイ 26ネン コバヤシ ロクゾウショウ ジュショウ ロンブン オウショクブドウキュウキン ノ ビョウゲンセイ セイギョ キコウ ニ カンスル ケンキュウ
  • Studies on the regulatory mechanism of Staphylococcus aureus virulence

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抄録

黄色ブドウ球菌は表在性膿瘍, 肺炎, 食中毒, 髄膜炎など様々な疾患をヒトに対して引き起こす病原性細菌である。特に, 幅広い抗生物質に対して耐性を示すメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は医療現場において問題になっている。本研究において私たちは, 黄色ブドウ球菌の病原性のふたつの新しい評価系を確立し, 黄色ブドウ球菌の新規の病原性制御因子の同定を行った。まず, 昆虫であるカイコを黄色ブドウ球菌の感染モデル動物として用いる方法を確立し, カイコに対する殺傷能力を指標として, 新規の病原性制御因子を複数同定した。これらの因子の一部は細菌細胞内においてRNA との相互作用に関わることが明らかとなった。次に, 黄色ブドウ球菌が軟寒天培地の表面を広がる現象(コロニースプレッディング)を見出し, この能力の違いを指標としてMRSA の病原性の評価を行った。近年, 高病原性株として問題となっている市中感染型MRSA は, 従来の医療関連MRSA に比べて, 高いコロニースプレッディング能力を示した。さらに, これらの菌株のコロニースプレッディング能力の違いが, 染色体カセット上の特定の遺伝子の有無によって導かれていることを明らかにした。この遺伝子の転写産物は機能性RNA として黄色ブドウ球菌の病原性遺伝子のマスターレギュレーターの翻訳を抑制することにより, コロニースプレッディングと毒素産生を抑制し, 動物に対する病原性を抑制することが明らかとなった。

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