乳糜腹水を認めた小腸軸捻転の1例

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  • A case of volvulus of the intestine with chylous ascites

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抄録

症例は54歳の男性。朝から腹痛を認め,軽快しないため当院救命救急センターを受診した。意識清明で,腹部所見としては臍周囲から下腹部にかけての圧痛を認めるも反挑痛は認めなかった。既往歴は,26歳時に十二指腸潰瘍穿孔の診断にて幽門側胃切除術を施行されていた。腹部造影CT検査にて腸間膜が渦巻き状(whirl sign)になっており,一部の小腸壁の造影効果が不良であった。また腹水も認めた。以上より小腸捻転による絞扼性イレウスと診断し緊急開腹手術を施行した。開腹所見は,Treitz靭帯の肛門側50cmから710cmまでの小腸が180度捻転し,乳白色の腹水を360mL認めた。捻転している腸管および腸間膜は乳白色を呈していた。捻転を解除することで小腸の血流は改善したため腸管切除は施行しなかった。腹水中のtriglycerideは658mg/dLと高値で乳糜腹水であった。術後経過は良好で, 第9病日に退院した。本症例は,捻転した腸管のリンパ流の途絶はあったが,腸管血流はある程度保たれていたものと考えられる。また乳糜腹水のCT値は,血性腹水のCT値よりも低値であったことより,小腸軸捻転による乳糜腹水を疑えれば,腹腔鏡でのアプローチも選択できると考えられる。

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