滑液包の役割の追求

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  • ─鷲足包への機械的刺激前後のSLR変化に着目して─

抄録

【はじめに、目的】 臨床場面においては、滑液包に徒手的圧擦を加えると関節可動域が改善されることがある。今回、滑液包の一つである鵞足包に徒手的圧擦刺激を加え、刺激前後のSLRを行い、滑液包圧擦の効果を確認した。また、鵞足包特有の役割を追及する為、鵞足包以外に、鵞足共通腱と大腿骨内側上顆(以下、筋膜部)に機械的刺激を加えた場合のSLR前後の変化も測定し、比較検討した。【方法】 実験1:滑液包への圧擦刺激の効果を確認する目的でおこなった。対象者は、健常人24名(男性11名、年齢25.8±3.5歳)である。対象者はプラットホーム上で仰臥位姿勢にした。いずれの対象者も大腿骨大転子が同位置となるようにした。まず、右下肢のSLRを他動的に行った。検者は2名で構成し、検者XがSLRの反対側下肢を固定し、検者Y1がSLRを行った。左右いずれの下肢に圧擦刺激を加えるかは、検者Xの任意とした。刺激を加える場合は、20秒間徒手で行い、約10秒後に再度SLRを行った。検者Y1がSLRの最終域を判断したタイミングで、定点よりデジタルカメラで画像撮影した。次に左下肢のSLRを行い、右下肢に刺激を加えなった場合のみ、刺激を加え、約30秒後に再度SLRと画像撮影を行った。検者Y1は、この約30秒間はその場を離れ、閉眼して待機した。また、検者Y1の心理的な影響をなくすために、刺激を加えなかった場合も同様に約30秒後にSLRと画像撮影を行った。定点カメラは、対象者の測定下肢側を真横から撮影できるように、プラットホーム上の大腿骨大転子の位置から1.8mの距離でカメラのレンズが大腿骨大転子と概ね同じ高さ(床面から53cm)になるように設置した。撮影した画像から、画像解析ソフトimageJを用いて、SLR角度を測定した。得られた結果は、Excelの統計ソフトStatcel2を用いて、分散分析とt検定を行った。実験2:鵞足包刺激と鵞足共通腱刺激、筋膜部刺激との相違を検討する目的で行った。対象者は、健常人56名で、aグループ28名(男性12名、年齢27.8±4.1歳)、bグループ28名(男性12名、年齢27.6±4.3歳)に分けた。刺激部位は、実験1での刺激を加えなかった場合の代わりに鵞足共通腱(aグループ)と筋膜部(bグループ)を追加した。また刺激は電動歯ブラシのヘッドの土台面を用いた。手順は、実験1と同様であり、検者Xと検者Y2で行った。【倫理的配慮、説明と同意】 当院倫理委員会の承認を得た上で、対象者に本研究の趣旨を説明し、同意協力を得た。【結果】 実験1では、鵞足包刺激を加えた場合のSLRの角度変化の平均値は8.2±6.8°であった。鵞足包刺激を加えなかった場合は-1.2±4.7°で、両者に有意差が認められた(p<0.01)。実験2のaグループでは、鷲足包刺激を加えた場合のSLR角度変化の平均値は2.9±2.3°、鵞足共通腱に刺激を加えた場合のSLR角度変化の平均値は3.0±2.5°で、両者に有意差は認められなかった。bグループで、鷲足包刺激を加えた場合は2.6±2.4°、筋膜部に刺激を加えた場合は3.2±2.3°で、両者に有意差は認められなかった。また、検者Y1と検者Y2による検者間の相違を調査するために、実験1と実験2のいずれにも属する7名において鵞足包刺激前のSLR角度の平均値を比較した。Y1(実験1)が測定した値は54.0±5.1°、Y2(実験2)が測定した値は70.5±7.0°であった。【考察】 実験1より、鵞足包の徒手的圧擦の効果が確認できた。徒手的圧擦のみで有意差が認められた可能性として次の要因を考えた。刺激面積の相違、刺激種類の相違(圧刺激と振動刺激)、対象者の皮膚の湿潤による電動歯ブラシの滑りにくさである。検者Y1に比して、検者Y2ではSLR角度が大きい傾向があったため、変化を見るために十分の可動域がなかった可能性があり、検者間の影響も今後の検討すべき課題である。【理学療法学研究としての意義】 滑液包の役割を追及することにより、関節可動域制限の評価と治療に役立てることができる。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2011 (0), Aa0864-Aa0864, 2012

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680548509312
  • NII論文ID
    130004692307
  • DOI
    10.14900/cjpt.2011.0.aa0864.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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