温熱負荷による廃用性筋萎縮進行抑制効果

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  • ─長軸方向部位間での比較─

抄録

【はじめに、目的】 近年,廃用性筋萎縮の進行抑制に対して運動負荷以外の方法で効果が見出されたのものとして温熱負荷がある.萎縮筋に対して温熱負荷を与える研究は数多く行われているが,そのほとんどが筋腹中央部での分析であり,同一筋長軸方向の部位間で効果を比較した報告はない.しかし,骨格筋の起始・停止機能を考慮すると,長軸部位による萎縮抑制効果の相違が考えられる.また,これらの研究の多くは温熱負荷方法に全身もしくは半身浴を使用しており,臨床の場での利用は困難である.本研究の目的は,筋長軸方向の部位間で温熱負荷による廃用性筋萎縮進行抑制効果の違いを明らかにすることである.また温熱負荷方法についても臨床応用可能な方法を検討した.【方法】 モデル動物はラット(Wistar系, 雄性, 8週齢)30匹とし,これらを10匹ずつ通常飼育する対照群(CON),7日間の後肢懸垂により廃用性筋萎縮を惹起させる懸垂群(HS),後肢懸垂に加え,毎日1回の温熱を負荷する温熱群(HSH)に無作為に振り分けた.後肢懸垂は装具により,背側骨盤部を上方に吊り上げることで後肢を非荷重状態とした.温熱は下腿深部温が約39℃になるよう調節した市販小型カイロを60分間両側下腿部に密着させることで負荷した.実験期間終了後,両側のヒラメ筋を摘出し,筋の起始部より25%,50%,75%部で切り分けた.その後,冷却されたイソペンタン液内で急速冷凍し,試料を作成した.右側ヒラメ筋切片に対してHE染色を施し,画像解析ソフトImage Jを用いて筋線維横断面積(CSA)を計測した.左側は塩化タリウム-201トレーサーを利用し,筋血流量の測定に使用した.統計処理には,一元配置分散分析を適応し,有意差(P<0.05)を認めた場合には,Tukeyの方法を用いて検定を行った.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は所属大学の動物実験委員会の承認を得て行った(承認番号:AP-101789).【結果】 CSAは群間の各部位の比較ではどの部位に関してもCON,HSH,HSの順に有意に高値を示した.同群内での部位別比較においてはCONは遠位部のみ有意に低値を示したが,HSH,HSに関しては遠位部ほど有意に高値を示した.HS,HSHのCSAの各部位相対比(HSH/HS)は近位部ほど高値を示した.筋血流量はCONのみ他の2群と比較し,有意に高値を示した.同群間の部位別比較ではHSHのみ遠位部が近位部と比較し,有意に高値を示した.【考察】 本実験結果より,今回の温熱負荷方法により筋萎縮が抑制できることが示された.また各部位のHS・HSHでのCSA相対比が近位部ほど高値を示したことから,後肢懸垂による近位部優位の萎縮が温熱負荷により近位部ほど軽減されることが示唆された.さらに筋血流量がHSHにおいて遠位部ほど高値を示したことから,温熱によるCSAの部位間の相違は筋血流量の関与が少なく,他の因子の関与が推察された.【理学療法学研究としての意義】 温熱負荷による近位部の筋萎縮抑制効果が明らかになれば,骨格筋全体として効果的な筋萎縮予防法へと繋がることが考えられる.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2011 (0), Ab1360-Ab1360, 2012

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205573936256
  • NII論文ID
    130004692605
  • DOI
    10.14900/cjpt.2011.0.ab1360.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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