脳性まひ児・者に対する粗大運動機能とバランス機能との関連性について

DOI
  • 前田 伸也
    佐賀整肢学園こども発達医療センター
  • 劉 斯允
    佐賀整肢学園こども発達医療センター 佐賀整肢学園からつ医療福祉センター
  • 武田 真幸
    佐賀整肢学園こども発達医療センター
  • 窪田 秀明
    佐賀整肢学園こども発達医療センター
  • 押条 賢貴
    佐賀整肢学園からつ医療福祉センター
  • 原 寛道
    佐賀整肢学園からつ医療福祉センター

書誌事項

タイトル別名
  • ─TUGとBBSではどちらがGMFMとの関連性が高いか─

抄録

【目的】 我々は第46回理学療法学術大会にて、18歳以下の脳性まひ(CP)児に対し、Timed Up & Go test(TUG)と粗大運動機能尺度(GMFM)、粗大運動能力分類システム(GMFCS)との関連性について調査した。結果TUGは、GMFM、GMFCSと負の相関関係にあると述べた。TUGと同様に高齢者のバランス機能尺度としてBerg Balance Scale(BBS)があり、どちらも脳卒中理学療法診療ガイドラインに掲載されている。諸外国では、CP児の効果判定としてTUGやBBSを用いた文献が散見できるが、TUG、BBS共に18歳以上のCP者に対する調査や、GMFMとの関連性についての報告が少ない。そこで、18歳以上にも調査対象を広げ、かつGMFMに対し、TUGとBBSのどちらがより関連性があるかを検討したので報告する。【方法】 歩行補助器具の使用は問わず、独力にてTUGが可能なCP児・者57名(男性33名、女性24名)を対象とした。平均年齢は19歳2ヶ月±10歳8ヶ月、GMFCSレベル1:29名、レベル2:18名、レベル3:10名であった。TUGの計測は離殿時をスタート、着座した瞬間をゴールとし、2回の実施のうち最速値をTUGとした。BBSは14項目からなる各項目0~4点、計56点を満点として算出した。GMFMは、66項目を評価した後、Gross Motor Ability EstimatorによってGMFM66スコアを算出した。その後それぞれの平均値を出し、統計処理を実施した。統計処理ソフトはSPSSを使用し、相関関係についてはPearsonの相関係数を算出し、有意水準を1%とした。またTUGやBBSが粗大運動機能に与える影響を検討するために、強制投入法による重回帰分析を行い、有意水準を1%とした。【説明と同意】 検査対象者に対し、研究の主旨を口頭ならびに文書にて説明し、保護者及び本人に同意を得た方のみ調査した。【結果】 平均GMFMスコアは77.56(レベル1:91.06、2:69.09、3:55.47)、平均BBS(点)は44.0(レベル1:54.2、2:42.2、3:17.9)、平均TUG(秒)は16.3(レベル1:7.1、2:11.7、3:50.9)それぞれの相関は、GMFMとTUGは中等度の負の相関(r=-0.580、p<0.01)、GMFMとBBSは強い正の相関(r=0.834、p<0.01)、TUGとBBSは中等度の負の相関(r=-0.649、p<0.01)であった。次にGMFMに与える影響として、GMFMを従属変数としTUGとBBSを独立変数とした重回帰分析の結果、BBSからGMFMへの標準偏回帰係数は有意であり(β=0.790、p<0.01)、TUGからGMFMへの標準偏回帰係数は有意ではなかった。(β=-0.067、p=0.497) 【考察】 TUGは、PodsiadloとRichardsonが考案した、バランス障害を持つ高齢者の移動能力を評価するために開発されたテストである。Williamsらの研究によれば、CP児に対し級内相関係数(ICC)、評価者間信頼性共に良好な結果であるとしている。BBSは、Bergらが高齢者のバランス機能をより適切に評価するために開発された評価である。Kembhaviらは、36人のCP児に対して、ICCや評価者間信頼性共に良好な結果であるとしている。今回の結果より、歩行可能なCP児・者は、GMFMとBBSに強い相関が認められた。また重回帰分析の結果、TUGよりもBBSがGMFMに強く影響していることがわかった。これは粗大運動機能とバランス機能とが密接に関与していることと、BBSがTUGよりも粗大運動機能の評価尺度として用いることができると推察した。脳性まひ理学療法診療ガイドラインでは、バランス機能に特化した評価項目はなく、立ち直り反応や平衡反応等に代表される中枢姿勢制御機構がどのように働いているかを主観的に評価することが多い。しかし具体的な目標設定をする上では、BBSはGMFMと同様に必要となる評価の一つと考える。TUGに関しては、3mという短い距離と立ち上がりや方向転換の要素が、経験のないCP児・者にとってはタイムに影響されやすく、このため決まった評価尺度を持つBBSの方がGMFMとの関連が高まったと推察した。今後はGMFMとTUGの各要素(起立・着座、歩行、方向転換)のどこと関連性が深いか調査していく。【理学療法学研究としての意義】 TUG、BBSは一般的に行われていないが、粗大運動やバランス機能の変化をより簡便に数値で表す事ができ、臨床で使いやすい評価だと考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2011 (0), Bb1174-Bb1174, 2012

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205571011968
  • NII論文ID
    130004692757
  • DOI
    10.14900/cjpt.2011.0.bb1174.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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