関節リウマチの骨粗鬆症

DOI
  • 阿部 敏彦
    田窪リウマチ・整形外科リハビリテーション室
  • 平石 志保
    田窪リウマチ・整形外科リハビリテーション室
  • 武智 政公
    田窪リウマチ・整形外科リハビリテーション室
  • 門田 三生
    田窪リウマチ・整形外科リハビリテーション室
  • 濱田 章弘
    田窪リウマチ・整形外科リハビリテーション室
  • 中村 江里
    田窪リウマチ・整形外科リハビリテーション室
  • 山本 晴城
    田窪リウマチ・整形外科リハビリテーション室

書誌事項

タイトル別名
  • ─FRAXによる骨折発生の危険度─

抄録

【はじめに、目的】 FRAX(WHO Fracture Risk Assessment Tool)とは、2008年にWHOが公表した、骨折リスクを評価する指標のことで、大規模な前向きコホートの結果に基づいて決定した臨床的危険因子によって、今後10年間に骨粗鬆症骨折が生じる確率(%)を算出するものである。今回、FRAXの各年代の実測値、度数分布さらには平均骨密度との関連について調査した。【方法】 対象は、当院外来通院中の40歳以上の関節リウマチ(RA)患者366人で全例女性、平均年齢63±9,8歳、罹病期間11,9±9,3年であった。調査項目はRAに対して免疫抑制剤(MTX)、ステロイド剤(S剤)、生物学的製剤(bio製剤)、骨粗鬆症に対して骨代謝を抑制するビスホスホネート(BP)製剤、骨形成促進テリパラチド(商品名フォルテオ)の薬物の有無、日本薬効検定委員会によるADL得点(上下肢各5項目)、歩行速度(10m)、骨塩量測定装置(DCS-600EX)による橈骨骨塩量測定にて、YAM(若年成人の平均骨密度)と比較しYAMに対する相対値(%YAM)と、FRAXスコアを算出した。FRAXスコアは、年齢、性別、体重、身長、既存骨折、両親の大腿骨骨折歴、現在の喫煙、糖質コルチコイド、RA、続発性骨粗鬆症、アルコール摂取の項目を評価ツール専用計算機を使用して計算する。統計学的解析にはステップワイズ重回帰分析をもちい、%YAMとFRAXスコアを各々従属変数とし、独立変数(年齢、罹病期間、ADL得点、歩行速度)と相関をみた。【説明と同意】 本研究における身長、体重および骨塩量測定は、外来看護士によりまた10m歩行速度の計測、ADL評価内容は、外来リハ初診時または、3ヵ月毎の理学療法施行時にまたFRAXスコア項目についてその内容を説明し患者の署名にて同意を得て介入している。【結果】 <薬物療法>RAの薬物療法では、(MTX)とS剤併用患者が全体の71%、S剤使用患者は全体の92%を占め、bio製剤使用例(58人)は全体の16%をしめた。骨粗鬆症に対する薬物療法では、(BP)製剤使用3種類合計276人75%、テリパラチド使用7人2%であった。<年代別平均%YAM・FRAXスコア>40代(30人)は101%・3±1、7%、50代(97人)は84%・8、3±2、0%、60代(146人)は、73%・14、6±4、0%、70代(73人)は61%・33、4±11、8%、80代(20人)は59%・47、8±7、1%であった。<%YAMとFRAXスコアの度数分布>%YAM が50%未満81人、60%62人、70%65人、80%75人、90%42人、100%以上41人で骨粗鬆症と診断されうる80%未満は全体の57%をしめた。FRAXスコアが10%未満122人、10から15%未満80人、15~20%未満62人、20%44人、30%21人、40%26人、50%以上11人で、FRAXスコア15%以上が治療開始の基準とされ全体の45%を占めた。<%YAMとFRAXスコアにおける統計的解析>重回帰分析により従属変数:%YAMでは、年齢、罹病期間、ADL得点の順に、また従属変数:FRAXスコアでは、年齢、10m歩行速度の順に相関が認められた。【考察】 WHOがFRAXを開発した背景には骨密度測定を受けない人が多いことや、一方で、骨密度だけでは骨折のハイリスク者を効率よくスクリーニングできないことが分かってきたことがある。2012年の「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」改訂で、「FRAXで評価した主要骨折リスク15%以上」が新たに薬物治療開始基準に加わる。今回、FRAXスコア15%以上は全体の45%をしめ、%YAMにおいて骨粗鬆症と診断されうる80%未満は全体の57%をしめた。このFRAXスコアと%YAMの差は、主要骨折リスクには全ての骨粗鬆症性骨折リスクが含まれていないため、FRAXで算出される推計値は実際より低くなると思われる。また、FRAXは、臨床的な骨折危険因子と骨密度を併せてリスクを算出するが、その中に「易転倒性」などの重要な危険因子が抜けているといった問題点もある。【理学療法学研究としての意義】 RAでは、続発する骨粗鬆症と転倒リスクの上昇により骨折リスクが高まるが、全てのRAにおいて骨粗鬆症や転倒リスクの上昇が起こるわけでなくいずれも関節炎の進行や廃用の合併に伴って高まる。bio製剤による治療が併発する骨粗鬆化の改善に有効であること、最近の骨代謝抑制および骨形成促進を導く薬物療法の展開に着目し、RAにおける転倒リスクと危険因子に対する研究は、理学療法学研究としての意義がある。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2011 (0), Ca0274-Ca0274, 2012

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205572459648
  • NII論文ID
    130004692948
  • DOI
    10.14900/cjpt.2011.0.ca0274.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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