慢性閉塞性肺疾患患者の6分間歩行距離と%1秒量の違いにおける身体特性の比較

DOI
  • 江越 正次朗
    医療法人大和正信会ふじおか病院リハビリテーション科 佐賀大学大学院医学系研究科
  • 堀江 淳
    神戸国際大学リハビリテーション学部
  • 阿波 邦彦
    敬天堂古賀病院リハビリテーション部
  • 今泉 祐次郎
    佐賀社会保険病院リハビリテーション科
  • 市丸 勝昭
    佐賀県立病院好生館リハビリテーション室
  • 直塚 博行
    佐賀大学医学部附属病院先進総合機能回復センター 佐賀大学大学院医学系研究科
  • 白仁田 秀一
    長生堂渡辺医院リハビリテーション室
  • 藤岡 康彦
    医療法人大和正信会ふじおか病院リハビリテーション科
  • 田中 將英
    社会保険浦之崎病院呼吸器内科
  • 林 真一郎
    佐賀大学医学部附属病院呼吸器内科

抄録

【はじめに、目的】 慢性閉塞性肺疾患患者において、%1秒量(%FEV1.0)が低値であるにもかかわらず、6分間歩行距離(6MWD)が高値な者と、%FEV1.0が高値であるにもかかわらず、6MWDが低値な者が存在する。そこで、%FEV1.0が50%未満かつ6MWDが350m以上群と、%FEV1.0が50%以上かつ6MWDが350未満群の2群に分類し、身体特性を比較することとした。【方法】 対象は、研究の参加に同意が得られた安定期COPD患者54名である。対象の内訳は男性51名、女性3名、平均年齢75.8±7.9歳、1秒率(FEV1.0%)49.4±19.2%であった。修正MRC息切れスケール(mMRC)は、Grade0が2名、Grade1が9名、Grade2が27名、Grade3が15名、Grade4が1名であり、GOLD重症度分類は、1期が5名、2期が17名、3期が25名、4期が7名であった。なお、対象の選定においては、重篤な内科的合併症の有する者、歩行に支障をきたすような骨関節疾患を有する者、脳血管障害の既往がある者、その他歩行時に介助を有する者、理解力が不良な者、測定への同意が得られなかった者は対象から除外した。測定項目は、Body Mass Index(BMI)、呼吸機能検査、膝伸展筋力、30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30)、握力、呼吸筋力検査(最大吸気口腔内圧(MIP)、最大呼気口腔内圧(MEP))、片脚立位時間、Timed Up and Go Test(TUG)、5m最速歩行時間とした。日常生活動作テストは長崎大学呼吸器疾患ADL質問票(NRADL)、Barthel Index(BI)、健康関連QOLテストはSt George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)で評価した。統計学的解析は、%FEV1.0が50%未満かつ6分間歩行距離が350m以上群と、%FEV1.0が50%以上かつ6分間歩行距離が350未満群の2群に分類し、各測定項目を独立サンプルによるt検定で2群間の特性を分析した。統計学的解析にはSPSS ver.17を使用し、統計学的有意水準は5%とした。データ表記は平均値±標準偏差で示した。【倫理的配慮、説明と同意】 対象に研究の趣旨、方法、公表方法、同意の撤回などについて文書を用いて口頭にて説明した上で同意を得た。なお、本研究は、佐賀大学研究倫理審査委員会にて研究の倫理性に関する審査、承認を得て実施した。【結果】 各測定項目の値は、%FEV1.0が50%未満かつ6MWDが350m以上群が32名、%FEV1.0が50%以上かつ6MWDが350m未満群が22名であり、その2群間において、膝伸展筋力(36.1±10.8vs 22.3±7.8kgf;p<0.001)、CS-30(19.0±3.6vs 13.3±3.4回;p<0.001)、握力(33.8±6.3vs 22.4±8.1kg;p<0.001)、MIP(94.9±39.0 vs 52.7±24.9cmH2O;p<0.001)、MEP(79.0±36.3 vs 39.0±16.9 cmH2O;p<0.001)、片脚立位時間(47.5±39.8 vs 23.8±22.3秒;p=0.036)、TUG(5.7±0.7vs 10.3±5.3秒;p<0.001)、5m最速歩行時間(2.9±0.8vs 3.5±0.8秒)、NRADL(76.4±21.4 vs 62.9±23.5点;p=0.03)、BI(100±0.0 vs 97.4±6.6点;p=0.036)に有意差が認められた。なお、BMI、FVC、%FVC、SGRQには有意差は認められなかった。【考察】 FVC、%FVCには有意差がみられなかったことから、COPD患者における6MWDは、呼吸機能よりも、筋力、バランス能力、歩行能力、ADL能力により強い影響を受けることが示唆された。しかし、BMI、SGRQには有意差が認められなかったことから、COPD患者における肥満度やQOLは6MWDや病期の進行とは別の因子である可能性が示唆された。今後はCOPD患者のQOLに影響を及ぼす因子についてさらに検証していきたい。【理学療法学研究としての意義】 COPD患者における6MWDは、病期の進行に関わらず、筋力、バランス能力、歩行能力、ADL能力に反映されることが示唆され、呼吸リハビリテーションによる運動能力、ADL能力向上が、運動耐容能の改善には重要であることが示唆された有意義な研究となった。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2011 (0), Da0304-Da0304, 2012

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680550778240
  • NII論文ID
    130004693221
  • DOI
    10.14900/cjpt.2011.0.da0304.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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