千葉県銚子市におけるリハビリテーションに関する住民調査 第1報

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抄録

【はじめに、目的】 地域包括ケアの導入が進められている中で、地域での理学療法士(以下PT)、作業療法士等(以下OT)の専門職の役割は重要である。しかし、地域医療・福祉において、リハビリテーション(以下、リハ)やPT、OT専門職についての認識の低さを痛感する。リハは名称独占、業務独占ではない制度的な問題もあるが、「リハ=マッサージ」、「身体機能訓練」のイメージが住民に強く、本来のリハの理念である「人間らしく生きる権利の回復」とは隔たりがある。そこで、地域住民のリハに対する認識を把握することで、地域でのリハ、専門職の在り方等について今後の市政への一助になることも踏まえ、アンケート調査を実施し、知見を得たので報告する。【方法】 対象は銚子市在住の65歳以上の住民(第1号被保険者)であり、要介護度3以上の方を除外し、無作為に抽出した3000名である。平成23年1月21日から2月14日に、銚子市において実施された、第5期介護保険事業策定に向けた日常生活圏域ニーズ調査に、リハビリテーションに関連する項目を独自に追加し、郵送調査法によりアンケートを実施した。質問項目は、「過去にリハビリテーションを受けた経験があるか」、「どこでリハビリテーションを受けたか」、「体の一部が動かなくなった時に、どの専門家に相談するか」、「医療・福祉に関する職業はどの程度の技能が必要か」、「リハビリテーションにたずさわる人は、どんな技能が必要とされると思うか」、「リハビリテーションと聞いて、思いつくもの」の7項目であり、全項目選択式とした。年齢、性別、リハビリ経験に着目し、関連項目のクロス表を作成し、χ2検定を用い統計学的検定を行った。尚、有意水準は5%未満を有意とした。【倫理的配慮、説明と同意】 アンケート調査の内容とその使用方法に関して、本人及び家族に書面で説明し、調査に参加する同意を得た。なお調査中に有害事象の発生は認められなかった。【結果】 回収数2174票(回収率72.64%)、有効回収数2169票(有効回収率72.30%)であった。回答者の内訳は男性1213名、女性956名、前期高齢者1037名(47.8%)、後期高齢者1132名(52.2%)、要介護認定状況は一般高齢者1172名(54%)、二次予防高齢者625名(28.8%)、要支援高齢者177名(8.2%)、要介護高齢者195名(9%)であった。χ2検定の結果、有意差を認めた項目として、男性と女性との間で、女性のリハ経験の割合が高く、整骨院でのリハを多く受け、通所型でのリハ経験の割合が高かった。また、二次予防高齢者に絞っても、女性が整骨院でのリハを多く受けていた。一方、高年齢ほどリハ経験があり、整骨院でリハを受けたと答えているのは、前期高齢者が多く、85歳以上は「病院・診療所」、「通所型施設」にて同様であった。身体が動かなくなった時に、リハ経験者はそうでない者に比べて、リハ専門職に相談すると答える者が多く、その半面、医師の割合は低かった。PT・OTの技能について、リハ経験の有無ではPT・OTには技能が必要であると答える割合が変わらなかった。【考察】 性別とリハとの関連で、男性と比較して女性はリハ経験の割合が高く、整骨院、通所型施設にて経験するものが多かった。しかし、リハ実施場所が、整骨院が多いことには、もともと運動器疾患を発症しやすい女性において、積極的に電気治療などを実施する結果と推察される。そのため、整骨院で実施されている内容が、リハと認識していることが問題であり、PT・OT専門職の関わりが薄く電気治療のみを継続し、状態が悪化するケースも認められている。また、前期高齢者は整骨院でリハを受けており、85歳以上は「病院・診療所」、「通所型施設」であると答えていることから、前期高齢者の段階で予防ができていない可能性も推察された。リハ経験によって、身体が動かなくなった時にPT・OT専門職に相談すると答える者が多いが、PT・OTの技能に関する項目では、経験の有無が専門職として技能が必要であるとの答えに結びついていない。このことは、リハ実施の際の説明不足や専門性を明らかにできていない、リハの職務の不透明さがあることが推察される。今後は地域住民への啓発活動として、日々の臨床場面でわかりやすいリハの説明、PT・OTだけではなく、住民が理解できるような専門性を示していくことが重要であることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】 リハビリテーションの概念、PT・OT専門職に関する、地域住民向けの啓発活動は各地で行われているが、住民の認識を2000余りという大規模データをまとめた報告は少ない。また、現状の住民の認識を理解できたことから、今後の地域包括ケアシステムに向けた取り組みにおいても本研究は意義がある。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2011 (0), Ec1049-Ec1049, 2012

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680548579328
  • NII論文ID
    130004693606
  • DOI
    10.14900/cjpt.2011.0.ec1049.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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