極超短波治療器から照射される電磁波が理学療法で関わる電子機器に及ぼす影響

DOI
  • 高木 峰子
    神奈川県立保健福祉大学リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 川村 博文
    神奈川県立保健福祉大学リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 鶴見 隆正
    神奈川県立保健福祉大学リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 菅原 憲一
    神奈川県立保健福祉大学リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 内田 賢一
    神奈川県立保健福祉大学リハビリテーション学科理学療法学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • ─生体情報モニター,輸液管理機器,運動療法機器,物理療法機器の稼働での検討─

抄録

【はじめに、目的】 極超短波治療器(マイクロ)は,深部温熱療法機器として多用されている.しかし,マイクロの電磁波は患部のみならずその周辺にも照射される可能性があるため,その電磁波による電磁場環境での管理が特に重要であるとされている.そのため,マイクロによる電磁場環境に関する検討が報告されているが,散見される程度である.電子機器に対する電磁波の安全管理として,2007年から電磁両立性(EMC)適合以外の医療機器の販売が規制されているが,この規制以前に購入したEMC未対応の電子機器を多くの施設で,継続使用していることが推測される.このことから,各使用者による安全管理の必要があると考えられる.さらにJIS規格では,2004年から製品毎の個別規定が作成され,マイクロもT-0601-2-6にて規定されているが,必ずしも臨床で予想される状況は網羅されていない.そこで,臨床現場を想定した具体的な安全管理をするために,マイクロによる電磁場環境が理学療法で関わる電子機器の稼働に及ぼす影響について検討を行ったので報告する.【方法】 使用したマイクロは,周波数2450MHz・出力100Wとした.治療導子は半球形を使用し,健常成人1名の右肩関節直上10cmの位置で真下向きになるように設置し,照射した.マイクロによる電磁場環境での稼働を確認する対象電子機器は,生体情報モニター(デジタル自動血圧計,パルスオキシメーター,心電図モニター受信機・送信機),輸液管理装置(輸液ポンプ,シリンジポンプ),運動療法機器(自転車エルゴメーター,トレッドミル),物理療法機器(Silver Spike Point therapy,干渉波治療器,低周波治療器,脊椎牽引装置,湯ホットパック用ハイドロコレーター,電気ホットパック治療器,超音波治療器,直線偏光近赤外線治療器)とした.それらはマイクロの治療導子から0.5-2.0mの0.5m間隔で,かつ治療導子と同じ高さにて稼働状況を確認した.また,各位置での電磁場環境の測定には電磁界測定装置を用い,対象機器と同位置とマイクロ無放射環境(コントロール)の電磁場環境を60秒間計測した.なお,心電図モニター受信機とパルスオキシメーターはEMC適合機器であり,その他の機器はEMC未対応であった.【倫理的配慮、説明と同意】 被験者には,本研究に関する趣旨を口頭および書面にて説明をし,書面にて同意を得た.また,物理療法機器の稼働確認は,所属機関の倫理委員会にて承認を得た上で人を介さず稼働を確認した.【結果】 心電図モニター受信機は1.5mより近位にて波形にノイズを認め,パルスオキシメーターは0.5mでアーチファクトのサインが表示されたが,稼働には異常を及ぼさなかった.シリンジポンプは0.5mで異常を示すアラームが鳴り,稼働停止した.トレッドミルは1.5mより近位にてモーター音が拡大し,0.5mで緊急停止した.干渉波治療器は0.5mでわずかに稼働音が大きくなったが,稼働には影響を及ぼさなかった.稼働に影響を及ぼした全ての機器は,電源を入れ直したところ,再度稼働を確認することができた.それ以外の機器は,いずれの位置であっても稼働に影響をもたらさなかった.また,各位置での電磁場環境(電場,磁場,電力密度)はマイクロより2.0m(12.5V/m,0.033A/m,0.042mW/cm2),1.5m(19.2V/m,0.05A/m,0.098mW/cm2),1.0m(26.5V/m,0.07A/m,0.186mW/cm2),0.5m(68.54±1.08V/m,0.1818±0.0029A/m,1.246±0.039mW/cm2),コントロール(0.14V/m,0.00037A/m,0.000006mW/cm2)であった.【考察】 EMC未対応機器であっても,マイクロから照射される出力100Wに対する電磁波耐性が備わっている電子機器が多く存在していた.心電図モニター受信機とパルスオキシメーターはEMC適合機器であったが稼働に影響を及ぼしたことから,外部からの情報を受信する必要がある電子機器は,電磁場環境からの影響を受けやすい可能性が考えられた.稼働に影響を受けた電子機器は全て可逆的な影響であったが,機器の稼働異常が間接的に患者へ影響を及ぼす可能性が高いため,マイクロと理学療法で関わる電子機器との位置関係には十分な安全管理が必要であると考えられた.【理学療法学研究としての意義】 本研究の知見は,理学療法士が電磁場環境に対する高い認識をもつ機会や安全な環境設定をする上での必要な研究資料となることが考えられる.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2011 (0), Fb0801-Fb0801, 2012

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680549078144
  • NII論文ID
    130004693661
  • DOI
    10.14900/cjpt.2011.0.fb0801.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ