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- 小林 拓
- 北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター
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抄録
人体は消化管の広大な粘膜面を介して莫大な数の細菌と共存している.通常腸管マクロファージ(Mϕ)は腸内細菌に対し炎症性応答をきたさないように制御されている反面,この免疫寛容の破綻が炎症性腸疾患(IBD)の原因であり,抑制性サイトカインIL-10と炎症性サイトカインIL-12p40がこの寛容と破綻の主役であると考えられている.我々は腸管Mϕにおいて転写因子NFIL3がIL-10によって誘導されることを見出しその機能を解析したところ,NFIL3はMϕにおけるIL-12p40の抑制因子であることが判明し,さらに興味深いことにNfil3−/−マウスはTh1/Th17型腸炎を自然発症することを見出した.Nfil3−/−マウスリンパ球を欠損させると腸炎を発症しないが,野生型CD4+ Nfil3+/+ T細胞を移入することで腸炎を発症することから,自然免疫細胞のNFIL3欠損が原因であると思われた.また腸炎はNfil3/Il12b二重欠損マウスや無菌マウスでは起きないため,NFIL3欠損Mϕが腸内細菌に反応してIL-12p40を過剰産生することが腸炎の本態であると考えられた.さらにヒト炎症性腸疾患患者の腸管Mϕにおいても同様にNFIL3の発現が低下していることを確認した.最近新たにIBDの疾患感受性遺伝子として同定されたことからも,NFIL3はIBDの病態解明のために重要なターゲットであると考えられる.
収録刊行物
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- 日本臨床免疫学会会誌
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日本臨床免疫学会会誌 37 (4), 272-272, 2014
日本臨床免疫学会