ランチタイム教育講演2  オートファジーの生理的意義と分子機構

  • 水島 昇
    東京大学医学系研究科 分子生物学分野

書誌事項

タイトル別名
  • [Not Available].

この論文をさがす

抄録

オートファジーは真核細胞に普遍的な細胞内分解システムである.オートファジーでは,細胞質の一部がオートファゴソームに取り囲まれた後にリソソームへと輸送され,そこで生じた分解産物は再び細胞質に戻されリサイクルされる.酵母を用いた遺伝学的研究をブレークスルーとして,オートファジーの分子生物学的研究はこの10年間に大きく進展した.オートファジー関連(ATG)遺伝子を利用した逆遺伝学的アプローチによって,マウスをはじめとするさまざまな生物種でのオートファジーの生理的意義が急速に明らかにされつつある.全身あるいは組織特異的オートファジー不能マウスを用いた解析から,オートファジーは飢餓時のアミノ酸プールの維持,細胞内タンパク質やオルガネラの品質管理,初期胚発生,精子形成,神経細胞変性抑止,腫瘍抑制,内因性抗原提示などにおいて重要な役割を担っていることが明らかになった.特に2013年には,オートファジー関連因子WDR45/WIPI4に変異を持つヒト神経変性疾患も発見された.一方,酵母で発見されたオートファジー関連因子のほとんどすべては高等動植物でも保存されており,それに基づいた分子機構の解析も進んでいる.講演では,オートファジーの代謝生理学的役割を中心に,オートファゴソーム膜形成の分子機構,オートファジー選択的基質の認識機構,オートファゴソームとリソソームの融合機構などについての研究成果についても紹介したい.

収録刊行物

詳細情報

問題の指摘

ページトップへ